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「同業の損害保険会社・損保事業者が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
損害保険会社・損保事業者の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
損害保険会社・損保事業者の相場は、①公開されている成約事例の顔ぶれ、②買い手が実際に使う値付けの考え方、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。なお公開されている成約事例は少額短期保険(ミニ保険)の会社が中心です。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例は少額短期保険会社が中心で、売り手の年商は1億円前後〜30億円程度、譲渡額は約0.85億〜10.3億円に分布。件数が限られるため売上規模別の倍率は安定して出せない |
② 買い手の値付けの考え方 | 損害保険会社の価値は保険料収入(売上)の倍率ではなく、保有契約の質・責任準備金と純資産・損害率(収支)で見られる。オファーは該当案件が少なく参考値にとどまる |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは該当案件が少なく代表値は出せないが、関心を持ちうる買い手候補は約120社が登録 |
まず公開事例を売上規模別に見たいところですが、損害保険会社・損保事業者の公開M&Aは上場企業による案件が中心で件数が限られ、その多くは少額短期保険(ミニ保険)の会社です。ここでは実名事例と公的統計を組み合わせて相場観を示します。売上(保険料収入)の倍率よりも、価値の見られ方に注目してください。
損害保険会社・損保事業者の公開成約事例は件数が限られ、売上規模別の倍率を安定して出せるほどのサンプルがありません。そもそも損害保険会社の価値は保険料収入(売上)の倍率では測りにくく、保有契約の質・責任準備金と純資産・損害率(収支)で見られます。代わりに、後述の実名事例と公的統計を参照してください。年商倍率はあくまで結果の目安です。
• 保険業は保有契約・責任準備金・純資産の評価が中心で、売上(保険料収入)の大小だけでは価値が測りにくい業種です
• 少額短期保険(ミニ保険)を軸に、特定分野の契約を持つ会社が買い手のグループ入りする形の承継が見られます
結論:損害保険会社・損保事業者の価格を決める最大の要素は、保険料収入(売上)の大きさではなく「保有契約の質と、それが生む収支」です。買い手が見ているのは、引き継いだ契約が継続的に保険料と利益を生み続けるか、そして責任準備金・純資産・ソルベンシーが健全かだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 保有契約の質と継続性(契約件数の積み上がり・更新率・顧客基盤・販売チャネル) | ◎ 最重要 | 引き継いだ契約が継続的に保険料と利益を生むかが価値の土台。契約の積み上がりや更新率、ウェブ集客などの獲得力が評価される |
2 | 損害率・コンバインドレシオ(収支) | ◎ 重要 | 保険金支払と経費の水準が収益力を左右する。損害率が低く収支が安定しているほど素直に評価が上がる |
3 | 責任準備金・純資産とソルベンシー(支払余力) | ○ | 将来の保険金支払に備えた準備金と自己資本の厚み。純資産を軸にした評価が使われ、支払余力の健全さが安心材料になる |
4 | 再保険の設計・販売網 | ○ | リスク移転の再保険スキームや代理店・ウェブなどの販売チャネルが、収支の安定と成長余地につながる |
— | 保険料収入(売上)の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 保険料収入が大きくても、損害率が高く収支が悪ければ評価は伸びない。価格は売上倍率では決まらない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「質の高い契約が継続的に積み上がる状態」を作り、次に「損害率を抑え収支を整える」。責任準備金・純資産の健全さで支払余力を担保する。保険料収入の規模を追うのはその後です。
結論:損害保険会社・損保事業者では、価格は年商(保険料収入)の倍率ではなく「保有契約の質+責任準備金・純資産+損害率(収支)」で決まります。買い手のオファーは該当案件が少なく、以下はあくまで参考としてご覧ください。
M&Aサクシードの該当案件に届いたオファーは数が少なく、算定方法を傾向として断定できるものではありません。保険業は事業会社の一般的な算定(EBITDA倍率など)がそのまま当てはまりにくく、保有契約の質や責任準備金・純資産、損害率をふまえた個別評価になります。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
純資産(責任準備金を含む)を軸にした評価 | 支払余力と資産の裏付けを見る。保険業で使われやすい考え方 |
保有契約の価値+収支を加味した個別評価 | 契約の継続性・更新率・損害率をふまえ、将来生む利益を評価に織り込む |
具体的にイメージすると
たとえば責任準備金と純資産で一定の裏付けがあり、そこに継続性の高い保有契約と低い損害率が評価されれば、それらを織り込んだ金額がオファーの初期レンジになります。ただし個別事情で変わります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「質の高い保有契約を継続的に積み上げ、損害率を抑えて収支を安定させ、責任準備金・純資産で支払余力を健全に保つこと」。保険料収入の規模だけを追っても、評価には直結しません。
結論:「うちのような保険会社に買い手がつくのか」という心配について。損害保険分野は当社データでの該当案件が少なく、1案件あたりのオファー社数を代表値として示すことはできません。以下は参考としてご覧ください。
M&Aサクシードの該当案件のデータでは、該当した案件の数が少なく、1社あたりのオファー社数を中央値・平均・最大として示すには母数が足りません。次項の買い手候補の母数と、実名事例・買い手プロフィールとあわせてご覧ください。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
案件数が少なくても、後述のとおり関心を持ちうる買い手候補は約120社登録されています。まずは「自社にどんな買い手が関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。損害保険会社・損保事業者関連の売り案件は市場にほとんど出回っておらず、公開されること自体が珍しい業種です。
一方、買い手側の関心は前述のとおり確かに存在します。売り案件が滅多に出てこない業種では、希少性そのものが交渉力になります。「出てくるのを待っていた」という買い手に出会えれば、競合案件と比較されることなく、じっくり条件を詰められる可能性があります。
もう一つ、交渉の環境として知っておきたい点があります。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件に目を通すため、関心が重なれば、比較検討できるオファーを同じ期間に集められます。オファーを1本ずつ受けて判断するのではなく、同じ期間に並べて比較できることが、交渉のしやすさに直結します。オファーが複数並ぶと、買い手も他社と比較されていることを前提に条件を出すため、価格だけでなく、経営者の関与期間や引き継ぎの進め方といった条件面でも、売り手の希望をのんでもらいやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、母数は少ないながらも買い手像が見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 100億円超の大手が中心。10〜30億円規模の買い手も |
M&A経験 | オファーを寄せた買い手の約7割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が中心。東証プライム・スタンダード・グロース等の上場企業も |
エリア | 約7割が東京。大阪・神奈川など都市部からのオファーも |
業種 | 金融・保険・IT・不動産関連など、保険事業や顧客基盤とシナジーを見込む買い手が中心 |
結論:損害保険会社・損保事業者の買い手で存在感が大きいのは、「保険・金融グループ」と「自社の顧客基盤やウェブ集客力を活かせる事業会社」です。保有契約と免許・ノウハウを引き継ぎ、既存の顧客やサービスと組み合わせられることが大きな動機だからです。
買い手は複数のタイプに分かれますが、出現頻度も価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
旅行・サービス系事業会社(自社顧客に保険を) | ◎ 主役の一角 | エイチ・アイ・エス(約3,433億円、損害保険会社を子会社化し旅行顧客に保険を提供) | 自社の顧客基盤に保険商品を組み合わせる。屋号・事業が継続されやすい |
IT・プラットフォーム系事業会社 | ○ ウェブ集客とのシナジー | スカラ(約82億円、ペット保険の少額短期保険を子会社化)/アシロ(約47億円、弁護士費用保険の少額短期保険を取得しウェブマーケを活用) | ウェブ集客・データ活用で契約獲得を伸ばす。共創・成長投資型 |
不動産・賃貸管理系事業会社 | ○ 顧客チャネルとの相乗 | 日本管理センター(約590億円、家財・テナント向けの少額短期保険を取得) | 賃貸入居者・オーナーという既存チャネルに保険を組み合わせる |
金融・投資グループ | ○ 金融サービスの拡充 | GMOフィナンシャルホールディングス(約533億円、少額短期保険を取得し金融サービスを拡充) | 既存の金融サービスに保険を加える。経営支援を受けて拡大 |
つまり「保険会社の買い手は限られるのでは」という心配は実態と逆です。保険・金融グループだけでなく、旅行・IT・不動産など自社の顧客基盤を持つ事業会社が、契約と免許・ノウハウをまとめて引き継ぎたいからこそ手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。なお公開されている事例は少額短期保険(ミニ保険)の会社が中心です。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
損害保険業 | 約30.1億 | エイチ・アイ・エス(約3,433億) | 10.34億 | 旅行顧客への保険提供に向けた損害保険会社の子会社化 |
少額短期保険業(ペット保険) | 約17.7億 | スカラ(約82億) | 4.0億 | ペット保険加入者の共創・つながり創出とウェブ活用 |
弁護士費用保険等の少額短期保険業 | 約0.13億 | アシロ(約47億) | 1.41億 | ウェブ集客比率の高さとウェブマーケティング技術の活用 |
少額短期保険業(賃貸入居者・テナント向け) | 約6.5億 | 日本管理センター(約590億) | 1.07億 | 賃貸オーナー・入居者チャネルとの相乗 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「引き継いだ保有契約が、買収後も継続的に保険料と利益を生み続けるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「引き継いだ契約が更新されず減っていかないか」「損害率が上がって収支が崩れないか」「責任準備金や純資産に想定外の不足がないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ保険料収入でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 保有契約が継続的に積み上がり、更新率が高い | ◎ 契約が減少傾向で、更新率が低い |
◎ 損害率が低く、収支(コンバインドレシオ)が安定している | ◎ 損害率が高く、収支が不安定 |
○ 責任準備金・純資産が厚く、支払余力(ソルベンシー)が健全 | ○ 準備金・自己資本が薄く、支払余力に不安がある |
○ ウェブ・代理店など獲得チャネルが機能し、代表個人に依存しない | ○ 代表個人の人脈や特定チャネルに契約獲得が集中している |
○ 再保険の設計が整い、リスクが管理されている | △ 契約・数理・財務の資料や再保険スキームが整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「契約が継続的に積み上がるか」「損害率を抑え収支が安定しているか」この2つを整えるだけで、同じ保険料収入でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計も見たいところですが、この集計には保険業に対応する中分類の区分がありません。ここでは個別倍率の掲載は控え、考え方だけ補足します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、損害保険会社・損保事業者との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | 保有契約の質+責任準備金・純資産+損害率(収支)を軸にした個別評価。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
損害保険会社・損保事業者の価格を最も左右するのは「保有契約の質と継続性」、次に「損害率・コンバインドレシオ(収支)」、そして「責任準備金・純資産とソルベンシー」です。価格は保険料収入(売上)の倍率では決まりません。公開されている成約事例は少額短期保険(ミニ保険)会社が中心で、買い手の主役は保険・金融グループのほか、旅行・IT・不動産など自社の顧客基盤やウェブ集客と組み合わせられる事業会社です。
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