





「同業のオフショア開発会社が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
オフショア開発会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
オフショア開発会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例では、譲渡額は年商のおよそ0.6〜0.9倍前後に分布(規模が大きいほど倍率は低めの傾向) |
② 買い手の値付け方法 | オファーで最も多いのは「EBITDA3〜5倍+手元現金」 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値8社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されているオフショア開発会社関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」の傾向に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1〜3億円 | 約0.9倍 | 約1,000万円〜約28億円 |
3〜5億円 | 約0.8倍 | 約5,700万円〜約8.8億円 |
5〜10億円 | 約0.7倍 | 約1.2億円〜約12億円 |
10〜30億円 | 約0.6倍 | 約3億円〜約26億円 |
• 譲渡理由は「事業の成長」が約31%、「後継者不在」が約27%。後継者問題より前向きな理由も多く見られる
• 所在地は東京が約6割。買い手・売り手とも首都圏に集まりやすい傾向
• 黒字案件は約5割。先行投資で赤字のままでも成約しており、黒字であることは必須条件ではない
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
ITサービス | 1,000万〜5,000万円 | 約380万円 |
SES | 1,000万〜5,000万円 | 約600万円 |
システム開発 | 1,000万〜5,000万円 | 約800万円 |
SES | 5,000万〜1億円 | 約1,460万円 |
システム運用 | 5億〜10億円 | 約1,200万円 |
結論:オフショア開発会社の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「海外開発拠点が低い離職率で安定して回っているか、ラボ型など継続受託の顧客が積み上がっているか」です。買い手が買っているのはすぐ使える海外の開発力と、続く受注だからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 海外開発拠点の安定性(離職率・ブリッジSE・現地マネジメント)と継続受託の顧客基盤 | ◎ 最重要 | 採用難のいま、稼働する海外拠点は希少な資産。拠点の安定と継続受注が収益と価格の土台になる |
2 | 営業利益(EBITDA)とラボ型(準委任)の比率 | ◎ 重要 | オファーはEBITDA基準が最多。利益と継続収益が厚いほど価格が上がる |
3 | 日本側の品質管理・ブリッジ体制 | ○ | 日本語での要件定義・品質担保を担える体制は、内製化を狙う買い手に高く評価される |
4 | 顧客分散・代表非依存 | ○ | 特定顧客や代表個人への依存はリスクとして減点される |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 受託売上が大きくても、拠点が不安定・人材が抜ける前提なら評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「海外拠点の離職を抑え安定稼働させる」、次に「ラボ型で継続受注と利益を示す」。受託本数を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは「EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金」に集約されます。算定方法に大きなばらつきはなく、買い手の多くが共通して利益を見ています。
M&Aサクシードのオフショア開発会社関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最頻はEBITDA倍率+手元現金。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金 | 標準形。これが基準と考えてよい |
EBITDA × 倍率(手元現金の加算なし) | 上記の変種。利益(EBITDA)を軸に評価 |
純資産 + EBITDA × 倍率 | 上記の変種。資産価値に収益力を加算 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金を上乗せした金額が、オファーの初期レンジになります。人材の定着や継続収益の厚みは、この倍率の中で評価されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「継続収益と利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような会社に買い手なんてつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。オフショア開発会社関連案件には、1社あたり中央値8社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードのオフショア開発会社関連案件のデータでは、1社あたり中央値で8社、多いケースでは73社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 8社 |
平均 | 約10社 |
最も多かった案件 | 73社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。オフショア開発会社関連の売り案件は市場にほとんど出回っておらず、公開されること自体が珍しい業種です。
買い手側の関心が前述のとおり存在することを踏まえると、この業種は「売り案件が出てくれば注目される」待ち需要型の市場です。市場に類似案件が少ないぶん、買い手は他案件と天秤にかけにくく、売り手が交渉の主導権を握りやすい構図といえます。
こうした買い手の厚みは、交渉の場面で具体的な意味を持ちます。プラットフォームを使えば、複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、条件を見比べられるオファーがまとまって集まりやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。複数のオファーが集まれば、交渉の主導権は売り手側に寄ります。価格に加えて、経営者の関与期間や引き継ぎの進め方などの条件面でも、売り手側の意向を反映しやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多。100億円超の大手も約2割前後を占める |
M&A経験 | 約66%が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約7割。東証プライム・グロース等の上場企業も約3割前後 |
エリア | 約8割が東京。大阪府・愛知県・長野県・神奈川県など地方の買い手も一定数 |
業種 | ソフトウェア・クラウド・システム開発の同業が中心。マーケティングや事業会社など隣接領域も |
結論:オフショア開発会社の買い手で最も動きが早いのは、技術者と顧客・案件をまとめて取り込みたい「同業・隣接のIT企業」です。人材採用が難しいいま、動いている組織と実績ごと引き継ぐほうが早いからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業IT・システム開発のロールアップ型 | ◎ 主役・最速 | SHIFT(1,298億・複数買収)/コアコンセプト・テクノロジー | 技術者・顧客・案件をまとめて取り込む。屋号・雇用が継続されやすい |
上場SIer・IT大手 | ○ 価格が出やすい | フューチャー(699億)/SBテクノロジー(657億) | 自社のサービス網に技術と人材を乗せ、提供領域を拡大 |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | AI inside(44億)/ジェイリース(173億) | 内製化・DX推進のための技術・人材の取り込み |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(IT関連の買い手候補にも一定数) | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業・隣接のIT企業は、技術者と顧客・案件をまとめて引き継ぎたいからこそ、体制の継続を前提に、競って手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
生産・物流の機能改善、基幹業務システムの分析・改善、情報システムの設計・開発・運用(ホープス) | 約50.7億 | SHIFT(1,298億) | 30.5億 | 多様な業界の基幹業務改善・DX支援の実行力を取り込み、エンタープライズ領域を強化 |
情報システムのコンサルティング・設計・開発、ソフトウェアライセンス販売・保守(YDC) | 約48.9億 | フューチャー(699億) | 20.25億 | 製造業向け基幹システム・データ基盤の知見を取り込み、コンサル×ITの提供力を強化 |
ERP領域のシステム導入・開発・保守・運用、システムエンジニアリング(クレイトソリューションズ) | 約2.7億 | SHIFT(1,298億) | 17.56億 | ERP領域の高い開発力を取り込み、グループのシステム開発体制を拡充 |
AIコンサルティング・AI関連ソフトウェア開発・AI人材教育(aiforce solutions) | 約1.0億 | AI inside(44億) | 16.42億 | AIの社会実装ノウハウと人材を取り込み、AI事業の展開力を強化 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「経営が代わっても、海外拠点と受注は回り続けるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商2億円でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 海外拠点が低い離職率で安定して回っている | ◎ 現地マネジメントが特定個人に依存している |
◎ ラボ型など継続受託の顧客が積み上がっている | ◎ 単発受託中心で、翌期の受注見通しが立ちにくい |
○ 日本側のブリッジ・品質管理体制が整っている | ○ 品質・コミュニケーションが属人的 |
○ 顧客が複数に分散している | ○ 特定顧客への依存が大きい |
○ 契約書・拠点の労務・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「拠点が安定して回るか」「継続受注があるか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。オフショア開発会社に近い業種を併記します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
情報サービス業(100件) | EV/EBITDA | 4.9倍 | 9.7倍 | 17.7倍 |
情報サービス業(106件) | PER | 6.7倍 | 13.5倍 | 27.7倍 |
インターネット附随サービス業(22件) | EV/EBITDA | 4.3倍 | 10.4倍 | 18.9倍 |
インターネット附随サービス業(24件) | PER | 11.2倍 | 23.6倍 | 31.5倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、オフショア開発会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDAの3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
オフショア開発会社の価格を最も左右するのは「海外開発拠点の安定性と、継続受託の顧客基盤」、次に「利益(EBITDA)とラボ型の比率」です。買い手の値付けはEBITDA3〜5倍+手元現金に集約され、IT関連案件には1社あたり中央値8社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、すぐ使える開発力をまとめて取り込みたい同業・隣接のIT企業です。
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