





「同業の土木設計事務所・建設コンサルタントが、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
土木設計事務所・建設コンサルタントの評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
土木設計事務所・建設コンサルタントの相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 公開事例は年商10〜30億円帯に限られ、譲渡額は約20.7億〜約21.9億円(年商に対する倍率の中央値は約1.2倍) |
② 買い手の値付け方法 | オファーでは時価純資産法とEBITDA倍率(3〜5倍)系が中心。純資産と収益力の両方を見る |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値7社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されている土木設計事務所・建設コンサルタント関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。この業種は公開されている成約事例が限られており、確認できたのは年商10〜30億円帯の単一の売上帯のみです。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」の目安としてご覧ください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
10〜30億円 | 約1.2倍 | 約20.7億円〜約21.9億円 |
結論:土木設計事務所・建設コンサルタントの価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「技術士・RCCMなどの有資格技術者と登録部門を、買収後も引き継げるか」です。官公庁業務は配置できる技術者と登録が受注の前提であり、買い手が気にするのは、買収後も受注と業務の遂行が続くかだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 技術士・RCCMなど有資格技術者の在籍・定着と登録部門 | ◎ 最重要 | 有資格者の配置と登録部門が官公庁業務の受注の前提。買収後も技術者が残る見込みが価格の土台 |
2 | 営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 買い手は純資産に収益力を加味して値付けする。利益が出ているほど素直に価格が上がる |
3 | 官公庁実績・入札参加資格と、点検・維持管理など継続需要への足場 | ○ | 実績と資格は短期間では作れない。インフラ老朽化に伴う点検・維持管理の需要は業務の継続性を支える |
4 | 発注元の分散・代表非依存の管理体制 | ○ | 特定の発注元や代表個人への依存は、買収後の受注継続リスクとして減点される |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、利益が薄い・技術者が残らない見込みなら評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「技術者と登録部門が引き継げる状態」を作り、次に「利益を残す」。売上を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは、時価純資産を土台にする方法と、EBITDA×3〜5倍で収益力を見る方法に集まります。表現は分かれても、買い手が共通して見ているのは「純資産」と「利益」です。
M&Aサクシードの土木設計事務所・建設コンサルタント関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計しました。案件ごとの個別算定(その他)を除くと、時価純資産法と、EBITDAや純資産を軸にした倍率系の方法が中心です。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
その他(案件ごとの個別算定) | 件数としては最多。資産や受注の状況に応じて個別に提示される |
時価純資産法 | 方法を明示したなかでは最多。時価ベースの純資産を土台に評価 |
EBITDA × 3〜5倍(+手元現金) | 収益力ベースの標準形。手元現金(ネットキャッシュ)を加える提示も |
純資産 + EBITDA × 3〜5倍/営業利益の数年分 | 資産価値に収益力(のれん)を加算する変種 |
具体的にイメージすると
たとえばEBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円が収益力ベースの目安。ここに時価ベースの純資産や手元現金、買い手とのシナジーが加味されます。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、利益を厚くし、純資産をきれいに保つこと。節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような設計事務所に買い手なんてつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。土木設計事務所・建設コンサルタント関連の案件には、1案件あたり中央値7社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの土木設計事務所・建設コンサルタント関連案件のデータでは、1案件あたり中央値で7社、多いケースでは11社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 7社 |
平均 | 約7.3社 |
最も多かった案件 | 11社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。現在、M&A市場に売りに出ている土木設計事務所・建設コンサルタント関連の案件は約15件と、決して多くありません。
これに対して買い手側は、前述のとおり1案件あたり中央値7社がオファーを出しています。売り案件の少なさに対して買い手の需要が上回る、売り手優位の需給バランスです。数少ない案件に買い手が集中するため、複数の候補を比べながら条件交渉を進めやすい環境にあります。
この需給の環境は、売り手にとって交渉の進め方そのものを変えます。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、経営者の関与期間や引き継ぎの進め方についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
ちなみに、市場に出ている案件の譲渡理由を見ると「事業拡大・成長戦略」と「後継者不在」が中心です。業績不振による売却は主流ではなく、前向きな理由での譲渡が目立ちます。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多(約4割)。100億円超の大手も含まれる |
M&A経験 | 約68%が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が中心(約86%)。東証プライム・スタンダードなどの上場企業も |
エリア | 約45%が東京。静岡・大阪・愛知・北海道など各地の買い手も手を挙げている |
業種 | 建設コンサルタント・測量・地質調査などの同業のほか、建設・インフラ関連の事業会社が中心 |
結論:土木設計事務所・建設コンサルタントの買い手で最も動きが目立つのは、「地域の建設コンサルタントを束ねるロールアップ型の同業」です。技術者と官公庁実績を面で引き継げることが動機であり、実際に同一の買い手が複数社を取得した公開事例があります。
買い手は複数のタイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業・建設コンサルタントのロールアップ型 | ◎ 主役・最速 | メイホーエンジニアリング(親会社メイホーホールディングス、約130.1億円。建設コンサルタント2社を取得) | 地域拠点・技術者・官公庁実績を面で引き継ぐ。屋号・雇用が継続されやすい |
上場・検査/インフラ関連ホールディングス | ○ 価格が出やすい | ERIホールディングス(約197.7億円) | 既存の検査・審査事業と環境・インフラ領域を連携させ、グループ会社化 |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | OCHIホールディングス(建材卸、約1,170.8億円) | 土木構造物の診断・調査などの専門性を、新たな事業の柱として取り込む |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | — | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買われるのでは」という心配は実態と逆です。技術者と地域の実績を面で引き継ぎたい買い手ほど、雇用と体制の継続を前提に手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
建設コンサルタント(河川環境)・環境調査測量・環境分析試験(福田水文センター) | 約18.3億円 | ERIホールディングス(約197.7億円) | 約21.9億円 | グループ企業と連携して地域の土木インフラ・環境関連事業を推進し、「自然共生社会」の実現に貢献する狙い |
土木構造物の診断・調査を主とする建設コンサルタント(日本調査) | 約18.3億円 | OCHIホールディングス(約1,170.8億円) | 約20.7億円 | 建材・住宅設備の卸売を軸とする大手グループが、土木構造物の診断・調査の専門性を新たな事業の柱として取り込み |
建設コンサルタント業・測量業(安芸建設コンサルタント) | 約6.5億円 | メイホーエンジニアリング(親会社メイホーホールディングス、約130.1億円) | 約5.0億円 | 「地域に根ざした建設コンサルタントのネットワークをつくる」ビジョンのもと、地域の安全・安心に貢献する体制を拡充 |
建設コンサルタント業・補償コンサルタント業・測量業(ノース技研) | 約3.7億円 | メイホーエンジニアリング(親会社メイホーホールディングス、約130.1億円) | 約3.0億円 | 同じビジョンに基づく連続取得。地域の建設コンサルタント網を面で広げる狙い |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが手を離しても、技術者と受注は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後に技術者が辞めないか」「官公庁の受注が続くか」「代表がいなくなって業務が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 技術士など有資格技術者が定着し、買収後も業務を引き継げる | ◎ 資格・業務が特定の個人に依存し、残る見込みが弱い |
◎ 代表が抜けても受注・照査・管理が回る | ◎ 代表個人に営業・技術管理が集中している |
○ 官公庁・民間の発注元が分散し、点検・維持管理など継続的な業務がある | ○ 発注元が特定先に偏り、単発の業務が中心 |
○ 営業利益が継続的に出ている | ○ 売上はあるが利益が薄い |
○ 契約書・技術者名簿・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「技術者と業務が引き継げるか」「代表に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。土木設計事務所・建設コンサルタントを直接対象とした区分がないため、事業内容が近い「技術サービス業(他に分類されないもの)」を参照します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
技術サービス業(他に分類されないもの)(36件) | EV/EBITDA | 5.3倍 | 7.6倍 | 15.6倍 |
技術サービス業(他に分類されないもの)(44件) | PER | 6.6倍 | 10.8倍 | 28.1倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、土木設計事務所・建設コンサルタントとの連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | 時価純資産法(時価ベースの純資産を土台に、収益力を加味)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
土木設計事務所・建設コンサルタントの価格を最も左右するのは「技術士などの有資格技術者と登録部門を買収後も引き継げるか」、次に「利益(EBITDA)」です。公開事例では年商10〜30億円帯で年商の約1.2倍にあたる譲渡額が確認でき、オファーの値付けは時価純資産とEBITDA倍率が軸。1案件あたり中央値7社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、技術者と地域の実績を面で引き継ぎたい同業・隣接の事業会社です。
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