





「同業の一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の相場は、①公開事例が限られるなかで公的統計とオファーから捉える価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 相場水準の見方 | 上場企業による中小単体の公開成約事例が僅少なため、オファーの算定方法と公的統計から水準を捉える |
② 買い手の値付け方法 | 許可・車両・施設という資産価値(時価純資産)と、収集・処理の収益力(EBITDA3〜5倍+手元現金)の両面で評価 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値5社の買い手がオファー(対象案件が少ない参考値) |
一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者は、上場企業による中小単体の年商規模別の公開成約事例が僅少なため、相場表(年商倍率)は割愛します。ここでは、買い手のオファーの算定方法と公的統計を軸に相場観を示します。参考として、M&Aサクシードで実際に成約した案件(事業内容を抽象化)を後掲します。
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
廃棄物収集運搬 | 1,000万〜5,000万円 | 約5,300万円 |
貨物運搬 | 1億〜2.5億円 | 約1億円 |
結論:一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の価格を決める最大の要素は、売上でも車両台数でもなく「自治体の一般廃棄物処理業許可と、市区町村の委託・入札契約が続くか」です。新規許可が下りにくい許認可事業だからこそ、買い手は買収後も許可と契約が引き継げるかを最も気にします。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 一般廃棄物処理業の許可(自治体が新規許可を絞る=参入障壁) | ◎ 最重要 | 許可がなければ事業そのものが成り立たない。新規取得が難しい地域ほど、既存の許可枠の価値が高い |
2 | 市区町村の委託・入札契約の安定性・継続性 | ◎ 重要 | 家庭系ごみ・し尿の委託や随意契約が続くほど収益が読める。契約の継続性が価格の土台になる |
3 | 営業利益(EBITDA) | ○ | 買い手はEBITDA基準でも値付けする。収集・処理の利益が継続的に出ているほど素直に価格が上がる |
4 | 収集ルート・車両・人員体制、代表非依存 | ○ | 効率的なルート、確保された車両と人員は引き継ぎ価値。運行管理や自治体折衝が代表個人に集中していると減点 |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、許可の裏付けや利益が薄ければ評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番がある。まず「許可と自治体契約という土台」を安定させ、次に「利益を残す」。売上や車両台数を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは、許可・車両・施設という「資産価値」と、収集・処理の「収益力」の両面から組み立てられます。EBITDA倍率一本ではなく、時価純資産をベースにした提示も一定数見られるのが、許認可・設備型のこの業種の特徴です。
M&Aサクシードの一般廃棄物処理業案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、時価純資産法・EBITDA倍率・その折衷が並びます。許可や設備という資産の裏付けと、処理収益の両面が見られています。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
時価純資産法(許可・車両・施設の資産価値) | 許可や設備という資産の裏付けを重視する提示。許認可・設備型のこの業種で一定数見られる |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金 | 収集・処理の収益力を評価する標準形。手元現金を上乗せする |
純資産 + EBITDA × 倍率 | 資産価値に収益力を加算する折衷型 |
具体的にイメージすると
たとえば時価純資産が2億円なら、これに営業利益の数年分(のれん)を上乗せするイメージ。収益基準で見れば、EBITDA5,000万円×3〜5倍で1.5億〜2.5億円に手元現金を加えた金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げる直接的な方法は、「許可・契約という資産の裏付けを固めること」と「利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」の両輪です。
結論:「うちのようなごみ収集業者に買い手なんてつくのか」という不安は、データを見るとその心配は小さいといえます。一般廃棄物処理業案件には1案件あたり中央値5社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの一般廃棄物処理業案件のデータでは、1案件あたり中央値で5社、多いケースでは12社の買い手がオファーを寄せています。ただし対象となった案件数が少ないため、参考値として見てください。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 5社 |
平均 | 約6.7社 |
最も多かった案件 | 12社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の売り案件が公開市場に出てくること自体が、実はかなり稀です。
買い手側の関心が前述のとおり存在することを踏まえると、この業種は「売り案件が出てくれば注目される」待ち需要型の市場です。市場に類似案件が少ないぶん、買い手は他案件と天秤にかけにくく、売り手が交渉の主導権を握りやすい構図といえます。
この需要の厚さを踏まえると、オファーの集め方が交渉条件を左右します。プラットフォームを使えば、複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、条件を見比べられるオファーがまとまって集まりやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。複数のオファーが集まれば、交渉の主導権は売り手側に寄ります。価格に加えて、従業員の処遇や引き継ぎ期間などの条件面でも、売り手側の意向を反映しやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 5億〜10億円が最多(約35%)。100億円超の大手も含む |
M&A経験 | 約80%が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約9割。東証プライム・グロース等の上場企業も一部 |
エリア | 東京が約35%。静岡・徳島・滋賀など地方の広域展開企業も多い |
業種 | 廃棄物・環境企業が中心。建設・運送など隣接業種も |
結論:一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の買い手で最も数が多く、最も早く動くのは「広域展開の廃棄物・環境企業によるロールアップ型」です。新規許可が下りにくいなか、既存の許可枠と収集網を面で確保できることが大きな動機だからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
廃棄物・環境大手のロールアップ型 | ◎ 最多・最速 | 大栄環境(802億、収集運搬から最終処分まで一貫して取り込み) | 許可・収集網・処理設備を面で取り込む。従業員の雇用も継続されやすい |
建設・運送など隣接の事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | 北日本紡績(リサイクル事業へ新規参入) | 環境・リサイクル事業への展開。既存の設備・物流との相乗り |
地場の同業・広域環境企業 | ○ 安定した受け皿 | —(近隣エリアの廃棄物・環境企業) | 収集エリアの隣接・補完。ルートと車両の効率化 |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(環境関連の買い手候補にも一定数) | 環境インフラへの成長投資・ロールアップの起点 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。広域展開の廃棄物・環境企業は、許可枠と収集網、そこで働く人員をまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用継続を前提に競って手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。金額の大きい大手案件も含みますが、許可・収集網・処理体制が評価される構図は中小規模でも共通します。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
産業廃棄物・汚染土壌の最終処分(スカラベサクレ) | 約60.6億 | 大栄環境(802億) | 440.0億 | 収集運搬から最終処分までの一貫体制と広域処理網の獲得 |
産業廃棄物の再生・収集運搬・処理(金井産業) | 約0.9億 | 北日本紡績(16億) | 1.2億 | 収集運搬の許可と処理体制の取り込み |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、許可と自治体契約、収集体制は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の不安です。「許可が引き継げて更新も続くか」「委託・入札契約が離れないか」「代表がいなくなって運行管理や自治体折衝が回らなくならないか」。この不安を小さくする要素は価格を押し上げ、不安を大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 一般廃棄物処理業の許可を安定保有し、更新も見込める | ◎ 許可の継続・更新に不安がある |
◎ 市区町村の委託・入札契約が継続している | ◎ 契約が単発・不安定で収益が読みにくい |
○ 収集ルート・車両・人員が整い、代表が抜けても回る | ○ 運行管理・自治体折衝が代表個人に集中している |
○ 顧客・契約が複数に分散している | ○ 特定の自治体・排出元に依存している |
○ 営業利益が継続的に出ている | △ 車両・許可・労務・財務情報が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「許可と自治体契約が続くか」「代表に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。委託契約比率などの具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。一般廃棄物処理業が含まれる「廃棄物処理業」の評価倍率を掲載します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
廃棄物処理業(EV/EBITDA・20件) | EV/EBITDA | 2.8倍 | 3.6倍 | 12.2倍 |
廃棄物処理業(PER・24件) | PER | 6.0倍 | 11.6倍 | 28.7倍 |
廃棄物処理業(PBR・28件) | PBR | 1.0倍 | 1.3倍 | 1.8倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | 時価純資産(許可・車両・施設の資産価値)を軸に、EBITDA×3〜5倍+手元現金の収益評価を組み合わせる形。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
一般廃棄物処理業者・ごみ収集業者の価格を最も左右するのは「許可と自治体契約が続くか」、次に「利益(EBITDA)」です。買い手の値付けは、許可・車両・施設という資産価値(時価純資産)と収集・処理の収益力(EBITDA3〜5倍+手元現金)の両面で組み立てられ、1案件あたり中央値5社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、雇用継続を前提に競って手を挙げる広域展開の廃棄物・環境企業です。
そして、自社に実際どんなオファーが届くかは、匿名・無料で確かめられます。まずは相場を見て、気が向いたらオファーを受け取ってみる、その順序で、ご自身のペースで選択肢を広げてみてください。
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