





「同業のHR・人材活用・人材育成サービス会社が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
HR・人材活用・人材育成サービス会社の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
HR・人材活用・人材育成サービス会社の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 公開事例は件数が限られるものの、年商10〜30億円帯では年商の約0.5倍前後。年商1億円未満の小規模帯では、研修プログラムやノウハウなど知的資産が評価され、年商倍率が高く出た例もあります |
② 買い手の値付け方法 | オファーで最も多いのは「EBITDA3〜5倍+手元現金」 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値4社の買い手がオファー(対象となる案件数は限られます) |
まず、上場企業による買収のうち公開されているHR・人材活用・人材育成サービス会社関連の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しました。該当する公開事例の件数が限られるため、各帯とも少数の事例にもとづく参考値です。譲渡額そのものよりも、「年商の何倍で成約しているか」の傾向と、規模帯によって評価のされ方が変わる点に注目してください。
売り手の年商 | 年商に対する譲渡額の倍率(中央) | 譲渡額の目安レンジ |
1億円未満 | 約5.4倍 | 約1億〜2億円 |
10〜30億円 | 約0.5倍 | 約1.2億〜13.5億円 |
結論:HR・人材活用・人材育成サービス会社の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「研修プログラムやノウハウを買い手が再現できるか、そして法人顧客との取引が続くか」です。買い手が気にするのは、買収後もそのサービスと収益を自分たちで提供し続けられるかだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 研修プログラム・ノウハウの再現性(教材・カリキュラム・メソッドが体系化され、引き継げるか) | ◎ 最重要 | コンテンツとノウハウが事業の土台。特定の講師や代表の頭の中にしかないノウハウは引き継げない。体系化されているほど価格の土台になる |
2 | 営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 買い手はEBITDA基準で値付けする。利益が出ているほど素直に価格が上がる |
3 | 法人顧客の継続性(リピート研修・年間契約)と顧客分散 | ○ | 毎年繰り返し発注される研修や年間契約は、買収後の売上継続リスクを下げる。単発受注中心・特定顧客への偏りは評価を抑える |
4 | 講師・コンサルタントの定着と代表非依存 | ○ | 主要な講師・コンサルタントが残り、代表が抜けても営業・運営が回る体制は評価されやすい |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、利益が薄い・ノウハウが属人的・受注が単発中心だと評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「プログラムとノウハウを、買い手が引き継げる形に整える」こと。次に「継続顧客と利益を積み上げる」こと。売上を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーは「EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金」に集約されます。算定方法に大きなばらつきはなく、買い手の多くが共通して利益を見ています。
M&AサクシードのHR・人材活用・人材育成サービス会社関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最頻はEBITDA倍率+手元現金。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 標準形。これが基準と考えてよい |
EBITDA × 数倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 上記の変種。倍率の幅を変えて収益力を評価 |
EBITDA × 3〜5倍 | 手元現金を分けずに収益力で評価 |
純資産 + 営業利益の数年分 | 資産価値に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
時価純資産法 | 資産の時価をベースに評価 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金を上乗せした金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような会社に買い手なんてつくのか」という心配は、データを見ると和らぎます。HR・人材活用・人材育成サービス会社関連の案件には、1社あたり中央値4社の買い手がオファーを寄せています。
M&AサクシードのHR・人材活用・人材育成サービス会社関連案件のデータでは、1社あたり中央値で4社、多いケースでは8社の買い手がオファーを寄せています。対象となる案件数は限られるため参考値ですが、複数の買い手が同時に関心を示す状況は確認できます。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 4社 |
平均 | 約4.2社 |
最も多かった案件 | 8社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。HR・人材活用・人材育成サービス会社の売り案件が公開市場に出てくること自体が、実はかなり稀です。
一方、買い手側の関心は前述のとおり確かに存在します。売り案件が滅多に出てこない業種では、希少性そのものが交渉力になります。「出てくるのを待っていた」という買い手に出会えれば、競合案件と比較されることなく、じっくり条件を詰められる可能性があります。
そのうえで大事になるのが、オファーの集め方です。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、従業員の雇用継続や取引先との関係維持についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像は具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多。次いで50〜100億円の中堅が続き、100億円超の大手も一部 |
M&A経験 | 約9割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約6割。東証グロース・プライムなどの上場企業も |
エリア | 約6割が東京。静岡・大阪・京都・福岡など各地の買い手も |
業種 | 人材育成・人材紹介・人材派遣などの人材関連、コンサルティング、BPO・アウトソーシングなど、隣接領域の事業会社が中心 |
結論:HR・人材活用・人材育成サービス会社の買い手で最も存在感があるのは、「研修プログラム・ノウハウと法人顧客基盤をまとめて取り込み、人材サービスの幅を広げたい同業・隣接の事業会社」です。自社の顧客基盤に研修・育成コンテンツを組み合わせれば、提供価値を一気に広げられると考えているからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業・隣接の人材サービス会社 | ◎ 主役 | アルー(約30.9億、研修サービス事業を取得)/ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(約24.9億、研修会社を取得) | プログラム・講師・顧客をまとめて引き継ぎ、人材サービスの幅を広げる |
上場・大手の事業会社 | ○ 価格が出やすい | コムチュア(約363.4億、IT教育・研修会社を取得)/フリービット(約550.7億、語学教育・研修会社を取得) | 自社事業と教育・研修コンテンツを組み合わせ、新たな収益の柱に育てる |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第 | 自社の顧客基盤に人材育成サービスを組み合わせたい事業会社(買い手候補に一定数) | 教育コンテンツの内製化・新規事業・法人顧客基盤の取得 |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | 人材関連の買い手候補にも一定数 | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買われるのでは」という心配は実態と逆です。人材サービスを広げたい買い手は、プログラム・講師・顧客をまとめて引き継ぎたいからこそ、事業の継続を前提に手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
通信教育教材・語学系出版物の企画・制作・販売、法人向け語学研修、eラーニング教材(アルク) | 約62.7億 | フリービット(約550.7億) | 約26億 | 学習指導要領の改訂で高まる「主体的に学び続ける」教育需要を見据えた、語学教育コンテンツ・教材制作力の取り込み |
企業の人材育成・能力開発、IT・経営分野の教育・研修事業(エディフィストラーニング) | 約13.2億 | コムチュア(約363.4億) | 約13.5億 | DXの進展でIT人材育成の需要拡大を見込み、クラウド・デジタル技術に強い教育・研修事業を取り込み |
国内外での企業研修の企画・運営、公開講座、アセスメント、オンライン教育(サイコム・ブレインズ) | 約8.1億 | ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(約24.9億) | 約5.4億 | 人材紹介・メンタルヘルスケアに研修事業を加え、「企業の人材価値向上」に向けた人材サービスの幅を拡大 |
リーダーシップ・マネジメント・営業・マーケティングなど各種研修サービスの提供(クインテグラル) | 約3.1億 | アルー(約30.9億) | 約2.2億 | 人材育成事業の拡大に向け、海外発の体系化された研修プログラムと顧客基盤を取得 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが手を離しても、プログラムと顧客は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後にノウハウが引き継げないのではないか」「主要な講師やコンサルタントが辞めないか」「法人顧客が離れないか」「代表がいなくなって営業が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 研修プログラム・教材・メソッドが体系化され、買収後も提供を続けられる | ◎ ノウハウが特定の講師や代表個人の頭の中にあり、引き継げない |
◎ 主要な講師・コンサルタントが定着し、代表が抜けても営業・運営が回る | ◎ 代表個人に営業・登壇・顧客関係が集中している |
○ リピート研修・年間契約など、法人顧客との取引が継続している | ○ 単発の研修受注が中心で、翌年の売上が読みにくい |
○ 顧客が複数の業種・企業に分散している | ○ 顧客が特定の1社・1業種に偏っている |
○ 教材・契約書・労務・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「プログラムとノウハウが引き継げるか」「代表に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。依存度などの具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。HR・人材活用・人材育成サービスを直接対象とした区分がないため、近い「専門サービス業(他に分類されないもの)」と「その他の教育、学習支援業」を併記します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
専門サービス業(他に分類されないもの)(50件) | EV/EBITDA | 2.8倍 | 5.1倍 | 10.8倍 |
専門サービス業(他に分類されないもの)(51件) | PER | 5.3倍 | 10.4倍 | 18.6倍 |
その他の教育、学習支援業(20件) | PBR | 0.9倍 | 1.4倍 | 5.2倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、HR・人材活用・人材育成サービス会社との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDAの3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
HR・人材活用・人材育成サービス会社の価格を最も左右するのは「研修プログラム・ノウハウの再現性と、法人顧客の継続性」、次に「利益(EBITDA)」です。買い手の値付けはEBITDA3〜5倍+手元現金に集約され、HR・人材活用・人材育成サービス会社関連の案件には1社あたり中央値4社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、プログラム・講師・顧客の引き継ぎを前提に手を挙げる、人材サービスを広げたい同業・隣接の事業会社です。
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