





「同業のホテル・旅館・宿泊施設が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
ホテル・旅館・宿泊施設の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
ホテル・旅館・宿泊施設の相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 中小規模の年商別の公開成約事例は僅少。相場観は買い手の値付け(EBITDA基準・時価純資産法)と、事業の中身(客室数・稼働率・立地・建物と設備の状態)に置くのが現実的 |
② 買い手の値付け方法 | オファーでは、EBITDA(利益)や時価純資産を軸に、建物・設備・営業権・手元現金を加味する形が中心 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値4社の買い手がオファー |
まず、上場企業による買収のうち公開されているホテル・旅館・宿泊施設の成約事例を、売り手の年商規模別に整理しようとしました。ただし、公開されている成約事例は大型の宿泊・リゾート施設に偏っており、年商1〜10億円といった中小規模の宿泊施設について、年商規模別の倍率テーブルとしてお示しできるだけの件数がありません。ここでは倍率表は載せず、実名の成約事例・オファーの値付け(EBITDA基準・時価純資産法)と、当社の成約傾向を相場観の軸に置きます。実名の成約事例は後半でご紹介します。
• 譲渡理由は「後継者不在」が約5割、「代表者の引退」が約2割、「事業の成長(さらなる拡大)」が約1割
• 所在地は東京が約1割で、観光地・地方の施設も多く、地域が全国に分散している
• 営業赤字の会社でも成約しており、黒字(約2割強が黒字)であることは必須条件ではない
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
宿泊業 | 1000万円~5000万円 | 約1,500万円 |
ホテル | 1000万円~5000万円 | 約3,000万円 |
ホテル | 1000万円~5000万円 | 約3,230万円 |
温泉旅館 | 1000万円~5000万円 | 約5,000万円 |
ホテル | 5000万円~1億円 | 約7,000万円 |
結論:ホテル・旅館・宿泊施設の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「立地と稼働率(客室が埋まり続けるか)」と「建物・設備の状態」です。宿泊業は建物という資産の上で成り立つ装置産業のため、買い手が気にするのは買収後も客室が埋まり、大きな追加投資なく運営を続けられるかだからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 立地と稼働率(観光地/都市/温泉地・客室数×稼働率×客単価) | ◎ 最重要 | 宿泊業の収益は「客室数×稼働率×客単価」で決まる。買い手が最も気にするのは、その立地で客室が埋まり続けるか。ここが価格の土台 |
2 | 建物・設備の状態と更新負担 | ◎ 重要 | 建物・設備は事業を動かす資産そのもの。老朽化していれば買収後に大規模改修の負担が乗る。更新状態が良いほど、買い手はゼロから作りにくい基盤として評価しやすい |
3 | 運営体制(自社運営か委託か)と代表非依存 | ○ | 運営が仕組み化され、代表が抜けても支配人・現場が回る体制は引き継ぎリスクが小さい。特定の人に依存した運営は評価を抑える |
4 | ブランド・予約チャネルとリピーター(OTA/直販/インバウンド) | ○ | 予約チャネルが分散し、直販やリピーターの基盤があるほど収益が安定する。特定チャネルへの依存は評価を抑える |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、稼働が低い・建物が古い・利益が薄いと評価は伸びない。埋まり続ける基盤と資産の状態が見られる |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「立地に見合う稼働と、更新の行き届いた建物・設備」という埋まり続けられる状態を示せるようにし、次に「利益を残す」。売上を追うのはその後です。
結論:ホテル・旅館・宿泊施設のオファーでは、買い手はEBITDA(利益)や時価純資産を軸に、保有する建物・設備・営業権・手元現金を加味して値付けしています。事業を動かす資産(建物・設備)と収益力の両方が見られます。
M&Aサクシードの宿泊関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、EBITDA基準や時価純資産法が中心で、残りもEBITDAか純資産を軸にした変種にまとまります。装置産業らしく、資産の時価を基準にした提示が目立つのが特徴です。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍(+手元現金) | 収益力(EBITDA)に倍率を掛け、手元現金を加える標準形 |
時価純資産法 | 資産・負債を時価で評価し直した純資産を基準にする方法。建物・設備を持つ宿泊業で使われやすい |
時価純資産 + EBITDA × 倍率 / 営業利益の数年分 | 資産価値に、収益力(のれん=営業利益の数年分)を加える変種 |
その他(案件の個別事情に応じた算定) | 立地・稼働率・ブランドや買い手とのシナジーに応じた個別の提示 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに保有する建物・設備の時価純資産や手元現金を加味した金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は、利益(EBITDA)を厚くしつつ、稼働率と建物・設備の状態という「買い手が安心して引き継げる基盤」を示せる状態を作ることです。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちに買い手なんてつくのか」という不安は、データを見るとその心配は小さいといえます。宿泊関連の案件には1社あたり中央値4社の買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの宿泊関連案件のデータでは、1社あたり中央値で4社、多いケースでは50社を超える買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 4社 |
平均 | 約9.8社 |
最も多かった案件 | 51社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうでしょうか。現在、M&A市場に売りに出ているホテル・旅館・宿泊施設関連の案件は約140件にのぼり、業種の中でも流通量が多い部類に入ります。
一方の買い手側のオファーは中央値4社です。案件数に対して需要が突出しているわけではなく、売り手同士の比較にさらされやすい市場といえます。だからこそ、磨いた状態で市場に出す——財務の整理、強みの言語化——が価格に直結します。
そのうえで大事になるのが、オファーの集め方です。M&Aサクシードのようなプラットフォームでは、複数の買い手が同時に案件を検討するため、比較できるオファーを同じ期間に集めやすくなります。相対で1社と向き合うのではなく、複数のオファーを並べて比較しながら進められる状態です。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、従業員の雇用継続や取引先との関係維持についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
ちなみに、市場に出ている案件の譲渡理由を見ると「後継者不在」が中心で、「選択と集中」も一定数あります。売却は特別な事情のある会社だけのものではなくなりつつあります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 100億円超が最多。5〜10億円規模の中堅から大手まで幅広い |
M&A経験 | 約7割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が約9割。東証プライム等の上場企業も一定数 |
エリア | 約5割が東京。京都・大阪・福岡・静岡など観光地を抱える地域も |
業種 | ホテル・旅館・宿泊の同業のほか、旅行・観光や不動産・投資系の事業会社も |
結論:ホテル・旅館・宿泊施設の買い手で最も存在感があるのは、「自社の宿泊・観光の事業基盤に施設をまとめて取り込み、運営を面で広げたい同業・隣接の事業会社」です。稼働の底上げやブランド・予約チャネルの共有で、施設単体では届かない収益を引き出せることが動機だからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業(ホテル・旅館運営)・地域補完型 | ◎ 主役候補 | ロイヤルホテル(約252億。経営基盤の強化のため芝パークホテルを取得) | 運営ノウハウ・予約チャネル・ブランドを共有し、施設をまとめて運営に取り込む。屋号・雇用が継続されやすい |
旅行・観光と組み合わせる事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | アドベンチャー(約254億。OTA『skyticket』の国内旅行・ホテル事業強化のためホテル運営会社等を取得) | 自社の旅行・OTA・観光事業と宿泊施設を組み合わせ、観光需要・インバウンドを取り込む |
リゾート・レジャー運営/再生系 | ○ 施設の再生・活用 | 日本スキー場開発(約368億。リゾート運営のシナジーでスキー場運営会社を取得) | リゾート・観光施設の運営基盤を活かし、施設の稼働・収益を再生・底上げする |
不動産・投資ファンド | △ 限定的だが存在 | —(宿泊関連の買い手候補にも一定数) | 建物・立地という資産価値に着目。運営会社と組んで稼働と収益を高める |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業・隣接の買い手は、施設と運営、ブランドをまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用や運営の継続を前提に手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。公開事例は大型の宿泊・リゾート施設に偏りますが、「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください(金額は規模も個別事情も大きく異なり、そのまま自社に当てはまる水準ではない点にご注意ください)。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
テーマパーク・ホテル等の運営(ハウステンボス) | 116.5億 | エイチ・アイ・エス(3,433億) | 約667億 | 観光立国・地域活性化の中核となる大型リゾートの運営基盤 |
ホテル・レストランの経営(芝パークホテル) | 47.7億 | ロイヤルホテル(252億) | 約30億 | 都市部ホテルの取り込みによる経営基盤の強化 |
ホテル開発・運営(ファイブスターコーポレーション等3社) | 8.9億 | アドベンチャー(254億) | 約10億 | OTAの国内旅行・ホテル事業の強化 |
スキー場の運営(ハーレスキーリゾート) | 3.4億 | 日本スキー場開発(368億) | 約2億 | リゾート・観光施設運営のシナジー |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが手を離しても、その立地で客室は埋まり続け、大きな追加投資なく運営を続けられるか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後も客室が埋まるか」「建物が古くて改修負担が重くないか」「特定の予約チャネルや代表に依存していないか」「運営スタッフが残るか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 立地に見合う稼働率が続き、買収後も客室が埋まる見込みが高い | ◎ 稼働が低く、立地・集客に不安がある |
◎ 建物・設備の更新が行き届き、当面の大規模改修が要らない | ◎ 建物が古く、近い将来の改修・買い替え負担が大きい |
○ 予約チャネルが分散し、直販・リピーターの基盤がある | ○ 特定のOTA・団体に依存し、条件変更の影響が大きい |
○ 運営が仕組み化され、代表が抜けても現場が回る | ○ 代表個人に運営・集客が集中している |
○ 稼働・客単価・許認可・労務・財務情報が整理されている | △ 必要資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「客室が埋まり続けるか」「建物・設備が整っているか」この2つを整えるだけで、同じ売上規模でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。稼働率や設備更新の具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。宿泊業に対応する中分類では、EV/EBITDAやPERは開示が限られ、PBR(純資産倍率)のみ集計値が公表されています。参考としてPBRの水準を挙げます。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
宿泊業(27件) | PBR | 0.3倍 | 1.0倍 | 2.1倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、ホテル・旅館・宿泊施設との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA(利益)3〜5倍と時価純資産法を軸にした評価。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
▶ まずは自社に近いホテル・旅館・宿泊施設の相場を見る(無料)
https://ma-succeed.jp/register/direct
▶ 匿名のまま、試しにオファーを受け取ってみる(契約・書類提出不要)
https://ma-succeed.jp/register/direct
相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
ホテル・旅館・宿泊施設の価格を最も左右するのは「立地と稼働率(客室が埋まり続けるか)」と「建物・設備の状態」、次に「運営体制」と「利益(EBITDA)」です。中小規模の公開成約事例は僅少ですが、オファーではEBITDA基準や時価純資産法の提示が中心で、1社あたり中央値4社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、雇用や運営の継続を前提に手を挙げる、同業・隣接(宿泊・旅行・観光)の事業会社です。
そして、自社に実際どんなオファーが届くかは、匿名・無料で確かめられます。まずは相場を見て、気が向いたらオファーを受け取ってみる、その順序で、ご自身のペースで選択肢を広げてみてください。
• かいしゃ価値トレンドの解説:https://ma-succeed.jp/content/knowledge/kaisha-kachi-trend
• かいしゃ価値トレンドで相場を見る:https://ma-succeed.jp/register/direct
そんなときに、まず使えるのが「かいしゃ価値トレンド」。会社名を出さず・約30秒・無料で、同業の成約相場と買い手の傾向を確認できます。