





「同業の訪問看護ステーション・訪問看護サービスが、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
訪問看護ステーション・訪問看護サービスの評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
訪問看護ステーション・訪問看護サービスの相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 同規模帯の公開事例が限られるため、価格水準はオファー(収益力ベース)と公的統計を主軸に見ます |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多いのは「EBITDA(利益)の3〜5倍」を軸にした方法 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値3社の買い手がオファー |
訪問看護は医療系の在宅サービスで、同規模帯の公開成約事例が限られます。そのため相場観は、M&Aサクシードのオファー(収益力ベース)と公的統計を軸に見ていきます。
• 譲渡理由は「自社事業の選択と集中」が中心。本業へ資源を集約するために手放すケースが目立つ傾向
• 無借金・黒字で、看護師体制が整った事業ほど買い手の関心が集まりやすい傾向
• 訪問看護に障がい児福祉など在宅系サービスを併設する事業は、買い手の裾野が広がりやすい
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
訪問看護 | 1億〜2億5,000万円 | 約2.2億円 |
結論:訪問看護ステーションの価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「常勤換算2.5人以上の看護師(管理者を含む)が確保・定着しているか」と「利用者数が安定しているか」です。医療系サービスであり、人員基準を満たす看護師がいなければ指定を維持できず、利用者数が収益の源泉だからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 看護師(管理者・常勤換算2.5人以上)の確保と定着 | ◎ 最重要 | 人員基準を満たせないと指定を維持できない。医療系サービスゆえ、買い手が最も気にするのは買収後に看護師が辞めないか |
2 | 利用者数の安定と稼働率、収益(EBITDA) | ◎ 重要 | 収益の源泉。安定した利用者数で黒字が続いていれば、素直に価格が上がる |
3 | 主治医・医療機関との連携と24時間対応体制 | ○ | 訪問看護指示書の発行元である医療機関との関係、24時間対応・精神科訪問看護の有無が事業の継続性と単価を左右する |
4 | 指定の継続性・法令順守と代表非依存 | ○ | 実地指導・監査で問題がないこと、代表や特定の看護師に依存しない運営体制は評価されやすい |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、看護師体制が薄い・利用者が不安定だと評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず人員基準を満たす看護師の定着と利用者数の安定を保ち、次に利益を残す。売上規模を追うのはその後です。
結論:訪問看護ステーションへのオファーは「EBITDA(利益)の3〜5倍」を軸に、手元現金や純資産を加える形にほぼ集約されます。買い手の多くが共通して利益と看護師体制の安定を見ています。
M&Aサクシードの訪問看護・在宅サービス関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最頻はEBITDA倍率。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA(利益)の3〜5倍 | 標準形。利益(EBITDA)を基準に評価する最も多い方法 |
EBITDA(利益)の3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 上記に手元資金を加えた変種 |
時価純資産法(保有資産の時価ベース) | 保有資産の時価を基準にする方法 |
純資産 + 営業利益の3〜5年分(のれん) | 資産価値に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
具体的にイメージすると
EBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金や純資産を加味した金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「看護師体制と利用者数を保って利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような規模に買い手がつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。訪問看護・在宅サービス関連の案件には1社あたり中央値3社、多いケースでは60社を超える買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの訪問看護・在宅サービス関連案件のデータでは、1社あたり中央値で3社、多いケースでは64社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 3社 |
平均 | 約7.8社 |
最も多かった案件 | 64社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。訪問看護ステーション・訪問看護サービス関連の売り案件は市場に約18件しかなく、流通量は限られています。
一方の買い手側は、前述のとおり中央値3社がオファーを出しています。流通量・オファー数とも派手な数字ではありませんが、裏を返せば競合する売り案件も少なく、一件一件が丁寧に検討される市場です。買い手の網を広く張れるかどうかが結果を分けます。
もう一つ、交渉の環境として知っておきたい点があります。プラットフォーム型のM&Aでは、複数の買い手が同じタイミングで案件を検討するため、比較検討できるオファーを同じ期間にまとめて集めやすくなります。1社ずつ順番に打診して回るのではなく、複数のオファーを手元に並べて、価格や条件を見比べながら交渉相手を選べる状態をつくれます。オファーが複数並ぶと、買い手も他社と比較されていることを前提に条件を出すため、価格だけでなく、社名・屋号の存続や従業員の雇用継続といった条件面でも、売り手の希望をのんでもらいやすくなります。
ちなみに、市場に出ている案件の譲渡理由では「後継者不在」が目立ちます。売却は特別な会社だけの選択肢ではない、ということの表れといえるでしょう。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多。100億円超の大手や1〜5億円規模まで幅広い |
M&A経験 | 約8割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 約9割が非上場。東証プライム・スタンダード・グロース等の上場企業も |
エリア | 東京が最多。愛知・大阪・兵庫など都市圏が続く |
業種 | 訪問看護・在宅医療の同業、医療・介護・ヘルスケアの事業会社、在宅サービスの拡張を狙う事業会社が中心 |
結論:訪問看護ステーションの買い手で最も数が多く、最も早く動くのは「同業・在宅医療系」の事業者です。看護師と利用者、医療機関との連携を面で引き継ぎ、在宅医療・介護の連携を強めたいという動機が強いからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業・在宅医療/介護系 | ◎ 最多・最速 | シーユーシー(約470億、在宅系事業を連続取得) | 看護師・利用者・指定を継続しやすく、医療機関との連携も引き継げる |
医療・ヘルスケア大手 | ○ 価格が出やすい | 京進(約264.6億、在宅・介護へ参入) | 在宅サービスの取り込みで医療介護連携を強化 |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第 | — | 在宅ケアを成長事業として本格参入・多角化 |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業・在宅医療系は、看護師・利用者・医療機関との連携をまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用や指定の継続を前提に、競って手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている、訪問看護を含む在宅サービスの成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
サービス付き高齢者向け住宅の運営、訪問介護・訪問看護等(リンクハート) | 約9億円 | 京進(約264.6億円) | 約4.5億円 | 人の一生を支える教育・保育・介護の一環として在宅・介護事業を拡大 |
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(ノアコンツェル) | 約66.2億円 | シーユーシー(約470億円) | 約53億円 | 在宅医療と介護の連携強化 |
介護サービス事業(恵の会) | 約13.1億円 | ソラスト(約1,374億円) | 約33.5億円 | 自立支援・地域トータルケアの推進とロールアップ |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、看護師と利用者、そして指定は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後に看護師が辞めないか」「利用者数が落ちないか」「代表がいなくなって運営や医療機関との連携が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ売上規模でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 看護師(管理者・常勤換算2.5人以上)が定着し、買収後も人員基準を満たせる | ◎ 離職が多く、人員基準の維持が不安定 |
◎ 利用者数が安定し、稼働が高い | ◎ 利用者数が少ない・変動が大きい |
○ 主治医・医療機関との連携と24時間対応体制が確立している | ○ 特定の医療機関・紹介元に依存している |
○ 代表が抜けても運営・採用・請求業務が回る | ○ 代表個人に運営・採用・連携が集中している |
○ 指定・労務・契約・請求の資料が整理されている | △ 必要書類が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「看護師が残るか」「利用者数が安定しているか」この2つを整えるだけで、同じ売上規模でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。訪問看護は医療系サービスであるため、「医療業」と、隣接する「社会保険・社会福祉・介護事業」を併記します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
医療業(51件) | EV/EBITDA | 3.3倍 | 7.8倍 | 16.4倍 |
医療業(71件) | PER | 2.2倍 | 9.5倍 | 20倍 |
社会保険・社会福祉・介護事業(99件) | EV/EBITDA | 3.7倍 | 9倍 | 19.2倍 |
社会保険・社会福祉・介護事業(104件) | PER | 3.5倍 | 8.5倍 | 19.7倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、訪問看護ステーション・訪問看護サービスとの連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA(利益)の3〜5倍。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
訪問看護ステーションの価格を最も左右するのは、売上規模ではなく「常勤換算2.5人以上の看護師(管理者を含む)が確保・定着しているか」と「利用者数が安定しているか」です。医療系サービスゆえ、主治医・医療機関との連携や24時間対応体制も評価を左右します。買い手のオファーはEBITDA(利益)の3〜5倍を軸に手元現金や純資産を加える形にほぼ集約され、訪問看護・在宅サービス関連案件には1社あたり中央値3社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、看護師・利用者・医療機関との連携を継続したい同業・在宅医療系です。
そして、自社に実際どんなオファーが届くかは、匿名・無料で確かめられます。まずは相場を見て、気が向いたらオファーを受け取ってみる、その順序で、ご自身のペースで選択肢を広げてみてください。
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