





「同業の訪問介護事業所・ホームヘルプサービスが、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
訪問介護事業所・ホームヘルプサービスの評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
訪問介護事業所・ホームヘルプサービスの相場は、①公開されている成約事例での価格水準、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 同規模帯の公開事例が限られるため、相場観はオファー(収益力ベース)と公的統計を主軸に見ます |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多いのは「EBITDA(利益)の3〜5倍」を軸にした方法 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは、1案件に中央値3社の買い手がオファー |
訪問介護事業所・ホームヘルプサービスは、同規模帯の公開成約事例が限られます。そのため相場観は、M&Aサクシードのオファー(収益力ベース)と公的統計を軸に見ていきます。
• 譲渡理由は「後継者不在」が約5割、「自社事業の選択と集中」が約3割
• 所在地は東京が約3割。買い手・売り手とも都市部に集まりやすい傾向
• 黒字案件は約半数。赤字でも、利用者基盤や有資格者・許認可によって買い手がつく可能性がある
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
訪問介護 | 5,000万〜1億円 | 約591万円 |
訪問介護 | 1,000万〜5,000万円 | 約700万円 |
訪問介護 | 5,000万〜1億円 | 約2,300万円 |
訪問介護 | 1,000万〜5,000万円 | 約2,700万円 |
訪問介護 | 5,000万〜1億円 | 約9,300万円 |
結論:訪問介護事業所・ホームヘルプサービスの価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「ヘルパー(訪問介護員)が確保・定着しているか」と「サービス提供責任者(サ責)の体制が整っているか」です。人員基準を満たす人材がいなければ指定を維持できず、サ責がいなければ訪問を回せないからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | ヘルパーの確保・定着とサービス提供責任者(サ責)の体制 | ◎ 最重要 | 人員基準を満たすヘルパーとサ責がいないと訪問を回せず指定も維持できない。買い手が最も気にするのは、買収後に人が辞めないか |
2 | 利用者数の安定と営業利益(EBITDA) | ◎ 重要 | 収益の源泉。安定した利用者基盤で利益が続いていれば、素直に価格が上がる |
3 | 指定・許認可の継続性と居宅介護支援(ケアマネ)併設 | ○ | 実地指導・監査で問題がないこと。ケアマネ併設は利用者の紹介経路になり評価されやすい |
4 | エリア需要と代表非依存の運営体制 | ○ | 高齢者人口の多い地域・複数拠点・代表に依存しない体制は評価されやすい |
— | 売上の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 売上が大きくても、ヘルパー不足や利益の薄さがあると評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まずヘルパーとサ責の定着、安定した利用者基盤を保ち、次に利益を残す。売上規模を追うのはその後です。
結論:訪問介護事業所・ホームヘルプサービスへのオファーは「EBITDA(利益)の3〜5倍」を軸に、手元現金や純資産を加える形にほぼ集約されます。買い手の多くが共通して利益と利用者基盤の安定を見ています。
M&Aサクシードの訪問介護関連案件に届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、最頻はEBITDA倍率。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にすぎません。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA(利益)の3〜5倍 | 標準形。利益(EBITDA)を基準に評価する最も多い方法 |
EBITDA(利益)の3〜5倍 + 手元現金(ネットキャッシュ) | 上記に手元資金を加えた変種 |
時価純資産法(保有資産の時価ベース) | 保有資産の時価を基準にする方法 |
純資産 + 営業利益の3〜5年分(のれん) | 資産価値に、のれん(営業利益の数年分)を加える方法 |
具体的にイメージすると
EBITDAが3,000万円なら、3〜5倍で9,000万〜1.5億円。これに手元現金や純資産を加味した金額が、オファーの初期レンジになります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「ヘルパーとサ責を定着させて利用者基盤を保ち、利益(EBITDA)を厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、節税のために利益を圧縮していると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような規模に買い手がつくのか」という心配は、データを見ると小さいといえます。訪問介護関連の案件には1社あたり中央値3社、多いケースでは60社を超える買い手がオファーを寄せています。
M&Aサクシードの訪問介護関連案件のデータでは、1社あたり中央値で3社、多いケースでは64社の買い手がオファーを寄せています。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
中央値 | 3社 |
平均 | 約7.8社 |
最も多かった案件 | 64社 |
複数の買い手が同時に関心を示す状況は、条件交渉でも有利に働きます。まずは「自社にどんな買い手が、何社くらい関心を持つか」を知るところからで十分です。
次に、売り手側の供給を見てみましょう。訪問介護事業所・ホームヘルプサービス関連の売り案件は市場に約18件しかなく、流通量は限られています。
買い手側は、前述のとおり1案件あたり中央値3社がオファーを出しています。供給・需要とも件数が積み上がる市場ではないぶん、「相性の良い買い手に出会えるか」が条件を大きく左右します。母集団の大きいプラットフォームで幅広く買い手候補に情報を届けることが、良い出会いの確率を上げる近道です。
交渉の進め方という点でも、押さえておきたいことがあります。M&Aサクシードのようなプラットフォームでは、複数の買い手が同時に案件を検討するため、比較できるオファーを同じ期間に集めやすくなります。相対で1社と向き合うのではなく、複数のオファーを並べて比較しながら進められる状態です。比較されている前提で買い手が条件を出す状況では、価格はもちろん、経営者の関与期間や引き継ぎの進め方についても、売り手の希望条件を軸に交渉を進めやすくなります。
なお、売りに出ている案件の譲渡理由としては「後継者不在」が最も多くなっています。同じ悩みを抱えるオーナーが売却という選択肢を現実に選んでいる、ということでもあります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、買い手像はかなり具体的に見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 10〜30億円が最多。100億円超の大手も多い |
M&A経験 | 約8割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 約9割が非上場。東証プライム・スタンダード・グロース等の上場企業も |
エリア | 東京が最多(約4割)。愛知・大阪・兵庫など都市圏が続く |
業種 | 訪問介護・在宅系の同業、医療・ヘルスケア、周辺サービスの事業会社が中心 |
結論:訪問介護事業所・ホームヘルプサービスの買い手で最も数が多く、最も早く動くのは「同業(介護・在宅系)のロールアップ型」です。ヘルパー・サ責・利用者基盤を面で引き継ぎ、エリアを広げたいという動機が強いからです。
買い手は4タイプに分かれますが、出現頻度もスピードも価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業(介護・在宅系)ロールアップ型 | ◎ 最多・最速 | セントケア・ホールディング(約563億、訪問介護のアールスタッフを取得) | ヘルパー・拠点・指定を継続しやすく、利用者・職員に優しい |
医療・ヘルスケア大手/金融グループ | ○ 価格が出やすい | SOMPOホールディングス(ワタミの介護を取得) | 在宅・施設サービスの取り込みで介護を成長事業に |
異業種・事業会社 | ○ シナジー次第 | 京進(約264.6億、サ高住・訪問介護のリンクハートを取得) | 教育・保育など人を支える事業からの多角化 |
投資ファンド | △ 条件次第 | — | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業・在宅系ロールアップ型は、ヘルパー・拠点・利用者をまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用や指定の継続を前提に、競って手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
有料老人ホーム・デイサービス・訪問介護を手がける事業(ワタミの介護) | 約354億 | SOMPOホールディングス(約5.5兆円) | 約210億 | 全国規模の介護基盤の獲得・成長事業への本格参入 |
サービス付き高齢者向け住宅・訪問介護・訪問看護(リンクハート) | 約9億 | 京進(約264.6億) | 約4.5億 | 人の一生を支える教育・保育・介護事業の拡大 |
訪問介護・居宅介護支援・福祉用具貸与(アールスタッフ) | 約4.1億 | セントケア・ホールディング(約563億、子会社:福祉の街) | 約1.3億 | 地域に根ざした訪問介護サービスの拡充 |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、ヘルパーと利用者、そして指定(許認可)は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後にヘルパーやサ責が辞めないか」「利用者が減らないか」「代表がいなくなって訪問が回らなくならないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ ヘルパー・サ責が定着し、買収後も人員基準を満たせる | ◎ 離職が多く、サ責・人員基準の維持が不安定 |
◎ 利用者数が安定し、居宅介護支援(ケアマネ)併設で紹介経路がある | ◎ 利用者が減少傾向・特定の紹介元に依存している |
○ 指定・許認可が健全で、行政処分や過誤請求の履歴がない | ○ 実地指導での指摘・返還・処分の履歴がある |
○ 代表が抜けても訪問調整・採用・請求業務が回る | ○ 代表個人に営業・採用・シフト管理が集中している |
○ 介護報酬の請求・労務・契約の資料が整理されている | △ 必要書類が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「人が残るか」「利用者基盤が安定しているか」この2つを整えるだけで、同じ売上規模でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照します。訪問介護に近い「社会保険・社会福祉・介護事業」を参照します。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
社会保険・社会福祉・介護事業(99件) | EV/EBITDA | 3.7倍 | 9倍 | 19.2倍 |
社会保険・社会福祉・介護事業(104件) | PER | 3.5倍 | 8.5倍 | 19.7倍 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、訪問介護事業所・ホームヘルプサービスとの連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDA(利益)の3〜5倍。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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相場の確認も、会員企業からのオファーの受け取りも無料です。契約や決算書の提出も不要で、オファー相手の企業に対しては会社名を匿名のまま利用できます。
問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
訪問介護事業所・ホームヘルプサービスの価格を最も左右するのは、売上規模ではなく「ヘルパーとサービス提供責任者(サ責)が定着しているか」と「利用者基盤が安定しているか」です。買い手のオファーはEBITDA(利益)の3〜5倍を軸に手元現金や純資産を加える形にほぼ集約され、訪問介護関連案件には1社あたり中央値3社の買い手がオファーを寄せています。買い手の主役は、ヘルパー・拠点・指定の継続を前提に競って手を挙げる同業(介護・在宅系)ロールアップ型です。
そして、自社に実際どんなオファーが届くかは、匿名・無料で確かめられます。まずは相場を見て、気が向いたらオファーを受け取ってみる、その順序で、ご自身のペースで選択肢を広げてみてください。
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