





「同業の保険代理店・保険募集代理店が、いくらでM&Aされたのか」気になったことはありませんか。
保険代理店・保険募集代理店の評価は、売上高だけでは決まりません。利益、人材の定着、事業の独自性や強み、顧客との契約継続性、そして買い手とのシナジーで変わってきます。同じ売上規模でも、評価が数倍違うことは珍しくありません。
この記事は、売却をすすめるものではありません。会社を続ける・伸ばす・いつか譲る、どの選択肢を考えるにしても、まず「自社が市場でどう見られているか」を知っておくことには意味があります。公開されているM&A成約事例と、M&Aサクシードのプラットフォームに届いた実際のオファーデータをもとに、その見方を解説します。
保険代理店・保険募集代理店の相場は、①公開されている成約事例の顔ぶれ、②買い手が実際に使う値付け方法、③1社にどれだけの買い手が関心を示すかをあわせて見ると立体的に分かります。
見る視点 | わかること |
① 成約事例での価格水準 | 上場企業による買収の公開事例は年商数億円〜70億円台まで幅広い。ただし公開事例には保険代理を併営する自動車販売会社等が含まれ、年商倍率はあくまで目安。保険代理店単体の価値は継続契約の手数料ストックで決まる |
② 買い手の値付け方法 | オファーで多いのは「EBITDA3〜5倍」を軸にした算定。ストック型の収益を評価する形が中心 |
③ 1社あたりの関心の集まり方 | M&Aサクシードのデータでは該当案件が限られ、1案件あたりの社数は代表値として示せない。買い手候補の母数は別途あり |
まず公開事例を売上規模別に見たいところですが、保険代理店・保険募集代理店の公開M&Aは上場企業による案件が中心で件数が限られます。さらに公開事例には、保険代理店業務を併営する自動車販売会社などが含まれ、年商倍率が実態より低く見えることがあります。ここでは実名事例と当社プラットフォームの傾向、公的統計を組み合わせて相場観を示します。
保険代理店・保険募集代理店の公開成約事例は件数が限られ、売上規模別の倍率を安定して出せるほどのサンプルがありません。加えて公開事例には保険代理を併営する自動車販売会社等が含まれ、年商倍率は目安にとどまります。保険代理店単体の価値は、売上規模よりも継続契約の手数料ストックで決まります。代わりに、後述の実名事例・当社プラットフォームの傾向・公的統計を参照してください。
• 譲渡理由は「代表者の引退」がおよそ3割で最も多く、「後継者不在」「自社事業の選択と集中」「事業の成長」が続く。承継目的と、前向きな譲渡が並ぶ
• 所在地は東京がおよそ7割。買い手・売り手とも都市部に集まる傾向
• 黒字での成約もあれば、そうでない案件も成約している。黒字であることは必須条件ではない
事業の特徴 | 年商規模 | 成約額の目安 |
保険代理店 | 1〜2.5億円 | 約6億円 |
保険代理店 | 10〜30億円 | 約4.7億円 |
保険代理店 | 2.5〜5億円 | 約1.3億円 |
結論:保険代理店・保険募集代理店の価格を決める最大の要素は、売上規模ではなく「継続契約のストック、更新のたびに入る手数料と、その更新率が買収後も残るか」です。買い手が買っているのは、積み上げてきた顧客と契約から毎年入ってくる安定した手数料収入だからです。
評価要素には序列があります。同じ要素でも、価格への効き方は同じではありません。
順位 | 評価要素 | 影響度 | なぜそうなるか |
1 | 継続契約のストック性・更新率(既存契約の残り方・解約率・更新手数料の安定) | ◎ 最重要 | 更新のたびに入る手数料が積み上がっているほど、買収後の収益が読みやすい。ここが価格の土台になる |
2 | 手数料収入の安定と利益率(商品構成・手数料水準・費用構造) | ◎ 重要 | 買い手はEBITDAを基準に値付けする。手数料収入が安定し利益が残っているほど、素直に評価が上がる |
3 | 募集人の体制・定着とコンプライアンス(有資格者の人数と定着・募集品質・法令対応) | ○ | 契約を維持・拡大するのは募集人。定着していて、募集管理や法令対応が整っているほど、買収後の不安が小さい |
4 | 乗合の幅・顧客基盤(取扱保険会社の数・顧客層の分散・地域基盤) | ○ | 複数社を扱える乗合の幅と、偏りの少ない顧客基盤は、提案力と継続性につながり評価されやすい |
— | 売上(手数料収入)の大きさ(単体) | △ 効きにくい | 手数料収入が大きくても、更新が続かず募集人が残らなければ評価は伸びない |
つまり、価格を上げたいなら順番があります。まず「継続契約が残り、更新が続く状態」を作り、次に「利益と募集人の体制」を整える。売上規模を追うのはその後です。
結論:買い手のオファーでは「EBITDA3〜5倍」を軸にした算定が中心で、これに時価純資産や手元現金を組み合わせる形が続きます。ストック型で収益が読みやすい事業だからこそ、買い手の多くが共通して利益を見ています。
M&Aサクシードに届いたオファーで、買い手が提示した算定方法を集計すると、EBITDA倍率を軸にしたものが中心でした。残りの方法も、EBITDAか純資産を軸にした変種にとどまります。
買い手が提示する算定方法(多い順) | 位置づけ |
EBITDA × 3〜5倍 | 標準形。ストック型の収益力を倍率で評価する |
EBITDA × 3〜5倍 + 手元現金 | 上記に手元現金(ネットキャッシュ)を上乗せする形 |
時価純資産 + EBITDA × 3〜5倍 | 上記の変種。資産価値に収益力を加算 |
具体的にイメージすると
たとえばEBITDAが5,000万円なら、3〜5倍で1.5億〜2.5億円。これに手元現金や資産価値を組み合わせた金額が、オファーの初期レンジになります。ただし個別事情で変わります。
ここからいえることはシンプルです。価格を上げるいちばん直接的な方法は「継続手数料でEBITDAを厚くし、手元現金を残しておくこと」。逆に、更新が細っていたり利益を圧縮していたりすると、その分だけ評価も下がります。
結論:「うちのような代理店に買い手がつくのか」という心配について。保険代理店・保険募集代理店は当社データでの該当案件が限られ、1案件あたりのオファー社数を代表値として断定することはできません。以下は参考としてご覧ください。
M&Aサクシードの保険代理店・保険募集代理店に関連する案件のデータでは、該当した案件の数が限られ、1社あたりのオファー社数(中央値・平均・最大)を代表値として示すには母数が足りません。次項の買い手候補の母数と、実名事例・買い手プロフィールとあわせてご覧ください。
1案件あたりのオファー買い手数 | 実績(M&Aサクシード) |
案件数が限られていても、後述のとおり関心を持ちうる買い手候補は一定数登録されています。まずは「自社にどんな買い手が関心を持つか」を知るところからで十分です。
では、売り手側の供給はどうか。M&A市場に出ている保険代理店・保険募集代理店関連の売り案件は約15件にとどまり、案件数は少なめです。
買い手側の需要は統計値では語れないものの、前述のとおり関心を示す買い手は存在します。売り案件・買い手とも数が限られる市場だからこそ、広い母集団の中から相性の良い一社を見つけられるかがすべてです。
もう一つ、交渉の環境として知っておきたい点があります。プラットフォームを使えば複数の買い手が同じ期間に案件を検討するため、オファーが重なったときに、条件を見比べながら判断できます。オファーを1本ずつ受けて判断するのではなく、同じ期間に並べて比較できることが、交渉のしやすさに直結します。オファーが複数並ぶと、買い手も他社と比較されていることを前提に条件を出すため、価格だけでなく、社名・屋号の存続や従業員の雇用継続といった条件面でも、売り手の希望をのんでもらいやすくなります。
実際にオファーを寄せた買い手のプロフィールを集計すると、母数は限られながらも買い手像が見えてきます。
買い手の属性 | 実際の傾向 |
売上規模 | 100億円超の大手が中心。10〜30億円規模や、5〜10億円規模の買い手も |
M&A経験 | およそ7割が「M&A経験あり」。買い慣れた買い手が中心 |
上場/非上場 | 非上場が中心。東証プライム・グロース・スタンダード等の上場企業も |
エリア | およそ7割が東京。買い手は都市部に集まる傾向 |
業種 | 保険・金融サービスの同業のほか、顧客基盤を広げたい事業会社、成長投資を狙う買い手など |
結論:保険代理店・保険募集代理店の買い手で存在感が大きいのは、「同業の保険代理店・金融サービス会社」と「顧客基盤を広げたい事業会社」です。継続契約のストックと顧客基盤、募集人の体制を、自社で一から築くには時間のかかるものとしてまとめて引き継げることが、大きな動機だからです。
買い手は複数のタイプに分かれますが、出現頻度も価格の出し方も同じではありません。実名の事例とあわせて、重みづけして見ます。
買い手タイプ | 位置づけ | 実名の例(売上規模) | 売り手から見た特徴 |
同業の保険代理店・金融サービス | ◎ 主役 | アイリックコーポレーション(保険販売の店舗・訪問チャネルを強化)/カラダノート(保険代理事業を通じた顧客接点の拡大) | 契約基盤と募集人をまとめて引き継げる相手。屋号や雇用が継続されやすい |
顧客基盤を広げたい事業会社 | ○ シナジー次第で高値 | ZUU(フィンテック領域で金融商品仲介・生損保代理の顧客基盤を取り込み) | 自社サービスの顧客に保険・金融の提案を広げる狙い |
自動車販売など保険代理を併営する事業会社 | ○ 併営目的で取得 | VTホールディングス(自動車販売関連事業の業容拡大にあわせ保険代理業務も取得) | 本業の周辺収益として保険代理を取り込む。年商倍率が本業に引きずられやすい |
投資ファンド | △ 限定的だが存在 | ―(保険代理店・保険募集代理店関連の買い手候補にも一定数) | 成長投資・ロールアップの起点。経営支援を受けて拡大 |
つまり「同業に安く買い叩かれるのでは」という心配は実態と逆です。同業や事業会社は、契約基盤と顧客、募集人をまとめて引き継ぎたいからこそ、雇用の継続を前提に手を挙げてきます。
買い手・売り手ともに公表されている成約事例です。「どんな会社が、いくらで、なぜ評価されたか」の具体像としてご覧ください。
売り手の事業 | 売り手売上 | 買い手(売上規模) | 譲渡額 | 評価の軸 |
保険代理事業を主とする会社 | 約2.7億 | カラダノート(約12.7億) | 約6.1億 | 保険代理事業を通じた顧客接点の拡大とライフスタイル分野への広がり |
店舗と訪問の両チャネルを持つ保険代理店 | 約11.1億 | アイリックコーポレーション(非開示) | 約4.7億 | 保険販売の店舗展開と訪問販売型チャネルの基盤強化 |
金融商品仲介業・生命保険及び損害保険代理業を営む会社 | 約4.1億 | ZUU(約29.9億) | 約1.3億 | フィンテック領域での金融・保険の顧客基盤の取り込み |
結論:高く評価される会社と、伸びない会社を分けるのは、つきつめると一つの問い「あなたが抜けても、継続契約と顧客、募集人は残るか」です。
買い手の頭にあるのは、買収後の心配です。「買った後に既存契約が解約されないか」「募集人が辞めて契約が維持できなくならないか」「代表がいなくなって取引先の保険会社との関係が切れないか」。この心配を小さくする要素は価格を押し上げ、大きくする要素は価格を下げます。
同じ年商2億円でも、評価には差が出ます。
価格を押し上げる(買い手の不安を消す) | 価格を下げる(買い手の不安を増やす) |
◎ 継続契約が積み上がり、更新率が高く安定している | ◎ 更新が細り、解約が多く手数料ストックが弱い |
◎ 代表が抜けても募集・管理・保険会社との関係が回る | ◎ 代表個人に顧客・保険会社との関係が集中している |
○ 募集人が定着し、募集管理や法令対応が整っている | ○ 募集人の入れ替わりが激しく、コンプライアンス体制が弱い |
○ 乗合の幅が広く、顧客が複数に分散している | ○ 取扱保険会社や顧客が偏り、離脱の影響が大きい |
○ 手数料収入が安定し、利益が継続的に出ている | △ 契約管理・労務・財務の資料が整理されていない |
最初の2行(◎)が決定的です。「継続契約と顧客が残るか」「代表に依存していないか」この2つを整えるだけで、同じ業績でも評価は変わってきます。
※ 当社の成約事例・買い手の取得理由から見られる傾向の整理です。具体的な閾値は個社ごとに異なります。
外部の裏付けとして、登録支援機関の中小M&A実績にもとづく公的統計を参照したいところですが、保険代理業に対応する中分類区分がないため、本表では個別倍率の掲載を控えます。保険代理店・保険募集代理店の価値は、継続契約の手数料ストックと収益力で決まる点に立ち返ってご覧ください。
参照業種(件数) | 指標 | 第1四分位 | 中央値 | 第3四分位 |
相場を見たら、次は「自社に実際どんなオファーが届くか」を確かめてみることもできます。
M&Aサクシードでは、相場を見たあと、気が向いたら試しにプラットフォームの会員企業からオファーを受け取ってみることができます。ここまでの相場の確認も、オファーの受け取りも、無料でご利用いただけます。
オファーを受け取るだけなら、契約は不要・決算書などの書類提出も不要・(オファー相手の企業に対して)会社名は匿名のままで利用できます。
「売却すると決めてから動く」のではなく、「オファーを見てから、どうするかを考える」という順序で進められます。
届くオファーには、「いくらで」だけでなく、次のような内容まで含めることができます。
• なぜ自社に関心があるのか(買い手の狙い・シナジー)
• 連帯保証はどうなるか
• 従業員はどうなるか(雇用の継続)
• 自分はいつまで経営に関わるか(引き継ぎ期間)
実際のオファーは、たとえば次のような形で届きます。
会社名 | 株式会社サクシードテック ※本記事用のサンプル表記 |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 首都圏を中心に事業を展開し、保険代理店・保険募集代理店との連携・取り込みに注力する企業。 |
売上高 / 従業員 | 100億円以上 / 1,001名以上 |
上場区分 / M&A実績 | 非上場 / 2〜5案件 |
関心を持った背景 | 弊社は人材・体制の強化を経営課題としており、貴社が強みとする領域は、まさに弊社が探し求めていた領域です。同エリアの営業・調達基盤と組み合わせることで強いシナジーが見込まれます。ぜひ早期に秘密保持契約を締結し、責任者同士の面談の機会を頂戴できれば幸いです。 |
買収金額の算定方法 | EBITDAの3〜5倍(手元現金・時価純資産を組み合わせる場合あり)。対象会社の収益性をベースに株式評価。詳細はデューデリジェンスを通じて検討。 |
経営者の処遇 | 売り主様のご意向を全面的に尊重。従業員・取引先へのスムーズな承継のため、数ヶ月〜半年程度の引き継ぎ期間(顧問等)をご相談。形態は状況に合わせ柔軟に。 |
連帯保証の解除時期 | クロージング時までに金融機関と調整し、前オーナー様の連帯保証を全て解除することを前提。 |
匿名なのはあなたの会社の社名だけ。オファーを送る買い手側は、社名・所在地(都道府県)・売上規模・M&A実績まで明かしています。だから「誰が、なぜ、いくらで」を確認したうえで、進めるかどうかを判断できます。
良いオファーが届いたときだけ、ご自身の判断で次のステップに進めます。もちろん、M&Aプロセスに詳しいM&Aサクシードの担当者と一緒に進めることもできます。
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問題ありません。むしろ決める前に、同業の相場や届くオファーを見ておくことで、続ける・伸ばす・譲るという選択肢を落ち着いて考えられます。オファーを見てから、どうするかを考える順序で進められます。
可能性はあります。買い手は赤字理由、人材の定着、顧客契約、改善余地を確認します。実際に営業赤字でも買い手がついた事例があります。
年商だけで決まりません。小規模でも、利益が出ている・顧客契約が安定している・買い手にとって魅力的な人材や資産を抱えている場合は対象になります。
売上倍率だけで見るのは適切ではありません。買い手のオファーでは、利益(EBITDA)を基準に手元現金を加える形が最も多く見られます。
保険代理店・保険募集代理店の価格を最も左右するのは「継続契約のストック性・更新率」、次に「手数料収入の安定と利益率」「募集人の体制・定着」「乗合の幅・顧客基盤」です。買い手のオファーはEBITDA3〜5倍を軸にした算定が中心で、ストック型の収益力が評価されます。買い手の主役は、契約基盤と顧客、募集人をまとめて引き継ぎたい同業の保険代理店・金融サービスと、顧客基盤を広げたい事業会社です。
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