事業承継・M&Aプラットフォーム M&Aサクシード

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「事業を次世代に引き継ぐために、今できること」経営者のための事業承継セミナー

2020年4月10日
イベントレポート

企業の経営者が引退する平均年齢は60代後半。現在、全国の経営者平均年齢は66歳で多くが引退を目前に控えているにも関わらず、後継者不在が大きな社会問題となっています。神奈川県横浜市も例外ではなく、経営者の53%が60歳以上で、その約半数に後継者が不在です。

そこで、横浜市経済局と公益財団法人横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)、株式会社ビズリーチが事業承継促進を考える経営者をサポートするべく、協定を締結。その一環として「経営者のための事業承継セミナー」が開催されました。本レポートでは、セミナーで語られた「円滑に事業を引き継ぐためのアドバイス」を余すところなくお伝えします。(✳︎)「ビズリーチ・サクシード」は「M&Aサクシード」にサービス名を変更しました(2022年6月7日追記)

「円滑な事業の引き継ぎの実現」

会社に関わるすべての人の「思い」を理解し、共有する

合同会社サニーブリッジ・コンサルタント代表
IDEC横浜経営相談員 中小企業診断士 齋藤裕二氏

中小企業の事業承継は、オーナーの考えだけでは円滑に行えません。後継者はもちろん親族や従業員、顧客などさまざまな人の「思い」を丁寧にすり合わせる必要があります。

まずは、オーナーの思い。「育てた事業や技術を後世に残したい」「従業員の雇用を守りたい」「取引先には迷惑をかけたくない」といった思いと、「引退後の生活が不安」「自分から仕事を取ったら何も残らない」という自分に対する不安があるでしょう。

それ以外にも、「自分の知識や経験を引き継げない」「誰を後継者にしたらいいのかわらない」という思いや、後継者が決まっていたとしても「後継者に任せるにはまだ早い」「後継者には引き継ぐ気概がない」という悩みがあると思います。

後継者からすると、「会社や業界に将来はあるのか」「多額の借入金は返済できるのか」「従業員は自分を認めてくれるのか」といった不安が当然あります。親族内承継の場合は、「今は親の時代と違うんだ」という反発心や「本当に経営を任せてくれるのだろうか」という疑問もあるでしょう。実際、お互いの思いを理解しないままに、形式上の事業承継で留まり、経営に関することは親である会長がすべて仕切っている、というケースはよく見ます。

その他の利害関係者でも、従業員にはリストラの不安がありますし、金融機関は借入金の返済ができるのかを気にします。後継者の家族に「実は承継することに反対だ」といった思いがあるかもしれません。こうした、いろんな人の思いを丁寧に汲み取って共有しないと、承継時の大きな障害となる場合も少なくありません。

思いのすれ違いが障害となった事例

思いのすれ違いが事業承継の障害となってしまった事例をご紹介します。1社目は、技術力に定評のある製造業の企業。後継者不在のため、オーナーはM&Aを検討されました。しかし、売却先が決まって譲渡契約直前のタイミングで、オーナーが急病になり入院されたのですが、そのときに従業員でもあるオーナーの家族がM&Aの話を初めて知って大反対したんです。結局、M&Aは破談になりました。

家族の意向を聞かずにオーナーが一人でM&Aを進めていたことが、結果として事業承継を遅らせる要因となりました。

2社目は、先代社長が急死したことでご子息が承継した、サービス業の企業。二代目社長は経営改善のために、設備投資による作業改善やコストダウンを目指していました。しかし、古参幹部がそれを妨害。投資時期が大幅に遅れてしまったことで、業績の低迷が長引いてしまいました。先代社長の急死による準備不足の承継と人事管理制度の未整備が円滑な事業承継を実現できなかった要因でした。

いざという時のために。今すぐ始めるべき3つのこと

事業承継を成功させるには、さまざまな人の思いを丁寧に共有した上で、あらゆる課題を潰しておく必要があります。その上で財務を含めた経営の健全性はどうなのか、株式の状況や取引先との関係性はどうなのか、資産は今すぐ承継できる状況なのか。

技術など知的財産は承継が簡単ではありませんし、後継者のリーダーとしての資質を見極めて従業員との良好な関係性を築くことを支援する必要もあります。事業承継は一朝一夕でできるものではなく、オーナーが高齢になると健康上の問題が出てくる可能性もあるので、今すぐにでもできることから始めるのをお勧めします。後継者が不在の場合でM&Aを前提に考える場合も同様です。

やるべきことは3つあり、1つは「事業承継計画」を作ることです。後継者の育成方法や相続財産の配分と株式譲渡時期、後継者の役職などを時系列で整理してください。その上で2つ目に「後継者育成計画」を作ります。これには具体的な実施内容を明記しますが、オーナーが一人で考え実行するのは無理があるので、外部のセミナーやカリキュラムを活用するのが有用です。

そして3つ目は、この機会に後継者を交えて中期的な発展のための「中期経営計画」または、経営改善を目指すための「経営改善計画」を作り、専門家に「会社価値算定」または「株式譲渡価格試算」を依頼しておくこと。これが、いざ事業承継しようとしたときに役立ちます。

「まだ現役を続けられる」と思っていても、いつかは必ず承継する日が訪れます。ですから、まずは事業承継実行の意思を固めて専門家に相談するのが良いでしょう。専門家と一緒に事業承継にあたっての課題を洗い出し、解決のための優先順位をつけて実行していく。これには時間と手間がかかるので、早めに取り組むことで会社を未来につなげていただければと思います。

「M&Aを成功に導く7つの秘訣」

オーナーの世代交代で、一番合理的な選択肢はM&A

株式会社経営承継支援 代表取締役社長
笹川敏幸氏

業界再編やグローバル化が進むなか、企業成長を実現させるためにM&Aは一般的な選択肢になり始めています。2018年にM&Aを実施した企業は3850社あり、これは上場企業が発表している件数なので、実際はこの3倍や4倍だと言われています。

買い手企業がM&Aをする目的は、事業創出もしくは拡大するための「時間」を買い、売り手企業とのシナジーによって競合他社との優位性を確立すること。新規事業を立ち上げるには時間がかかりますが、すでにその事業を展開している会社を買収すれば、そのぶん時間は短縮できます。

一方で、売り手企業の一般的な目的は、事業の選択と集中。そして現在社会問題化している後継者不在による事業承継です。日本では、オーナーが60歳以上の企業の66.1%に後継者がいません。後継者が不在のまま廃業する道もありますが、未払金や取引先への違約金、従業員への退職金を支払いのため、不動産売買などをし資産を現金化しますが、結果、オーナー個人が負担する負債の方が大きくなり清算できない可能性もあります。

だから、オーナーが世代交代を考えたとき、現実的な選択肢は「従業員承継」と「親族内承継」「M&A」の3つ。しかし、従業員承継は難しく、従業員から社長になってもリーダーシップを発揮できず従業員が辞めていくケースもあるため、親族内に承継者がいない場合はM&Aが合理的な選択肢になるのです。

M&Aは中小企業の未来を変える「特効薬」

私からは、M&Aの成功事例を3つご紹介します。1社目は、売上2億円、2期連続赤字の運送会社の事例。オーナーは75歳で、もともと会社を清算しようとしていましたが、会計事務所からM&Aを勧められて一緒に相談に来られました。

私は財務状況を確認し、従業員や保有するトラック、顧客などについて話を聞いていくと、大手上場企業の2社が得意先だということがわかったんです。それは、40年前に社長が飛び込み営業で獲得した顧客。今同じように営業をしても門前払いでしょうし、40年間築いてきた信頼関係は簡単には作れません。これは他にない価値ですよと伝えてM&Aを実行すると、すぐに譲り受け企業との話が進んで成約に至りました。

今では、譲り受けた若手経営者が両社のシナジーによって事業を成長させていますし、譲渡側のオーナーも無事引退して第二の人生を楽しまれています。

また、M&Aはオーナーの引退を実現させるだけでなく、事業を大きくするための経営戦略でもあります。2社目は、接客業に特化した人材派遣会社の事例です。50代のオーナーは、大手グループの傘下に入って資金繰りの厳しさを解消したいと考えていました。

同じ人材派遣業でも事業領域が違えば譲り受け企業からすると大きな価値なります。そこで製造業に強い大手人材派遣会社にM&Aを提案しました。結果、50代のオーナーは大手のグループ企業に入ることができ、資金繰りを気にせずに事業を拡大させて売上を何倍にもされています。

最後は、譲り受け企業の未来を救ったM&Aの事例です。親が経営していた運送会社を継いだ若手社長は、安定した収益はあるものの、会社をより成長させるために一念発起してM&A を実施。自分たちとは違う領域の輸送物を取り扱う運送会社を譲り受けました。

するとその1年後にリーマンショックのあおりを受けて、既存事業の売上が単月では8割減になってしまったのです。しかし、譲り受けた運送会社の売上は左右されなかったので倒産は免れ、今では業績も回復して成長路線に入っています。

M&Aの準備期間は約2年。実績ある専門家と円満な承継を目指す

M&Aによる譲渡企業のメリットは、「経営が安定する」、「従業員の雇用が安定する」、「取引規模の拡大などで従業員の士気が上がる」の3つ。オーナーにとっても、株式で譲渡すれば税務メリットを得られますし、流動性の低い株を現金化することで相続対策もできます。そして何よりハッピーリタイアが実現します。

では、どうすればM&Aを成功させることができるのか。成功のポイントは3つあり、1つは「譲渡のタイミング」を見極めることです。自社の業界でM&Aが盛んであれば譲り受け企業がすぐに見つかりますが、盛んでなければ長期戦になります。人が足りない業界はM&Aが頻繁に起こっているので、該当する業界で1年後2年後の業績見通しが立っているなら、M&Aを検討することをお勧めします。

2つ目は、候補先探しや手続き、引き継ぎなどの事前準備に半年から2年はかかるので、その時間を考慮すること。70歳で引退したいなら、遅くとも68歳から準備を始める必要があります。そして3つ目は、豊富なM&A経験を持つ専門家をパートナーに選ぶこと。会社を伸ばすにはどんな企業に譲り受けてもらうべきなのか、財務や労務、ビジネスの全てを見て最適な判断ができる専門家を選んでください。

最後に、本日お伝えした事例やこれまでの経験より、譲渡企業がM&Aを成功させる秘訣をまとめると、「実績のある専門家に依頼する」「現状を正しく(専門家に)伝える」「候補先企業を明確にする」「企業価値を確認する」「手数料等を明確にする」「M&Aの相談先をあまり広げない」「頑張って経営をする」以上7つ。
最後の「頑張って経営をする」というのは、M&Aを専門家に依頼しても、引き続き頑張って経営をするということです。M&Aを依頼しているという理由で設備等の新規投資をためらうと企業価値が損なわれることがあるからです。また依頼後も頑張って経営を続けることが最高の秘密保持にもなると思います。ぜひ双方にメリットのある幸せなM&Aを実現させてください。

「インターネットを活用した事業承継M&A」

自社の市場価値を知り、選択肢と可能性を広げてほしい

株式会社ビズリーチ 事業承継M&A事業部 事業部長
前田洋平氏

即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」では、累計1万1000社以上の採用活動を支援する中で「社長の右腕を募集したい」というご相談を多くいただいています。それは裏を返すと「後継者がいない」ということ。さらに、全国80以上の自治体と連携し、全国の中小企業の採用支援をするなかでも、後継者問題に直面してきました。

2025年には、約245万人の中小企業経営者が70歳以上になり、その半数にあたる127万社が後継者不在による「廃業予備軍になっている」と経済産業省が発表しています。価値ある事業を未来につなげるための選択肢は、親族や従業員による承継か外部人材の登用、事業承継M&Aの3つ。

そこでビズリーチでは、経営者に選択肢と可能性を広げてもらうことを目指し、日本全国の譲渡企業と譲り受ける企業が出会えるM&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を立ち上げました。リリースからの1年半で、譲渡案件は1600件以上、譲り受け企業は3300社以上が登録しています。

このプラットフォームを使って確認していただきたいのは、丹精込めて作り上げてきた大事な会社の「市場価値」です。自分の会社にはどんな可能性があるのか、どんな企業から声がかかるのかを試して欲しいから、譲渡企業は一切無料でご利用いただけます。

しかも、ビズリーチ・サクシードは審査に通過した企業のみが閲覧でき、声をかけてきた企業とも最初は匿名でのコミュニケーションが可能。安心して事業承継の機会を最大化できます。

実際、オーナー同士が直接コミュニケーションを取れることで、運命的な出会いを果たした事例があります。譲渡企業は後継者不在の警備会社で、譲り受け企業は人材派遣会社です。人材派遣会社は、高齢者から「働きたい」という問い合わせが多くあるものの、対応できないことが課題でした。そんなとき、ビズリーチ・サクシードに掲載されていた警備会社の情報を見て思いついたのが、屋内施設の警備の仕事なら高齢の方にも紹介できること。

早速、警備会社にお声がけすると、警備会社も案件はたくさんあるのに人を採用できない課題を抱えていたんです。すぐに事業承継の話はまとまり、まさにwin-winの関係を築くことができました。登録しなかったらきっと出会えていなかったと思います。

また、インターネットを活用したM&Aだからこそ、地域を超えた事業承継が実現するのもポイントです。ニッチな技術と販路を持つ東海地方のメーカーは、M&Aサクシードに登録したことで、取り扱い商材と販路を増やしたいと考えていた近畿地方の大手メーカーと出会っています。

登録すれば、日本各地の企業から声がかかる可能性があり、それが会社の未来と従業員を守ることにつながります。事業承継は一筋縄にはいきません。だからこそ、一つの手法としてビズリーチ・サクシードも活用し、未来を切り拓いていただけたら嬉しいです。