事業承継・M&Aプラットフォーム M&Aサクシード

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ニッチトップ製造業の新たな成長スキーム。M&Aによる成長企業グループへの参画

  • 譲渡
    株式会社エムアンドシー
    事業概要:レアメタルを用いた精密加工部品製造業
    本社所在地:埼玉県川口市
    譲渡理由:事業成長のため
    株式譲渡
    譲り受け
    日本材料技研株式会社
    事業概要:化学品製造業
    本社所在地:東京都中央区
    譲り受け理由:事業成長のため
  • 東京都
  • 埼玉県
  • 精密加工部品製造業
  • 化学品製造業

中小企業のM&Aで最も用いられる手法が株式譲渡です。なかでも第三者への譲渡は、創業者/オーナーとしてつくり上げてきた事業に新たな視点を加えることにつながり、次の時代へと会社を承継、発展させる方法と言えるでしょう。それだけでなく、従業員雇用の継続や取引先などの関係性維持が図れることも大きなメリットとなります。今回の記事では、「M&Aによってニッチトップ企業の集合体を作る」ことを掲げた成長企業グループに、自社の成長を託したオーナー経営者父子の決意に至るストーリーを追います。譲渡企業である株式会社エムアンドシー 前・代表取締役社長 加瀬 雅己 氏と現・取締役社長 加瀬 一成 氏、そして譲り受け企業である日本材料技研株式会社 代表取締役社長 浦田 興優 氏の3名に話を聞きます。(2022年6月公開)

優良なニッチトップ製造業と成長企業グループの出会い

――ニッチな領域において、エムアンドシー様は優良企業として知られています。

エムアンドシー 現・社長 加瀬一成 レアメタルを中心とした加工製品を、主に中国の協力メーカーで生産し、販売しています。自社による工場は持たないファブレスメーカーです。現在は、医療機器用精密部品の比重が高く、取引先は国内外の大手医療機器メーカーが中心です。

大手医療メーカーのCTスキャナーの部品では、半分以上を納めています。私たちの強みは、中国生産でありながら「QCD=Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)」について高い水準を維持している点にあります。製造コストを抑えながら、品質保証と納期保証をしっかりと行うことが、お客様の満足につながっています。

――エムアンドシー様は1996年に加瀬雅己様によって創業されました。

エムアンドシー 前・社長 加瀬雅己 エムアンドシーの始まりは自動車部品の製造販売でした。かなりの業績をあげ、順調に成長しました。しかし、将来の成長を考えた時、自動車部品だけでは難しいと感じ、2000年初頭に思い切って医療の領域へと舵を切りました。

――エムアンドシー様を譲り受けたのが日本材料技研株式会社様です。

日本材料技研 浦田 日本材料技研株式会社(以下、JMTC)はJMTCグループの中核企業で、子会社としてベンチャーファンドを運営するJMTCキャピタル合同会社があります。JMTCでは、機能材料分野における大手企業で埋もれている休眠特許ライセンスを譲り受けて、スケールアップ、マーケティングを進めて事業化しています。また製造については、私たちもエムアンドシーと同じくファブレスメーカーです。

 

安定した経営なのに、なぜM&Aだったのか?

――経営は順調なのに、エムアンドシー様はなぜ第三者承継を選んだのでしょうか?

加瀬雅己 私が70歳を超え、年齢的な限界を感じたことが最大の理由です。かつては、自動車から医療という流れを予見できましたが、残念ながらその先が見えなくなってしまいました。「会社の将来を助けていただきたい」。M&Aアドバイザーに相談をした

ところ、一貫して誠意を持って対応してくださいましたし、弊社に代わってM&Aサクシードに登録してくださったことで、JMTC様と出会うことができました。

――加瀬一成様がエムアンドシー様の現・社長を務められており、親族内承継という選択肢もありえたように思います。

加瀬雅己 現状のままでも会社の継続はできたのですが、会社の発展性には疑問がありました。業績を伸ばしていくためには第三者の力を借りて、新しいことに挑戦していくことが、息子の一成(エムアンドシー現・社長)や社員のためになると考えたのです。うちの製品は大変優れていると自負していますが、顧客が特定の分野に限定されています。第三者承継はその壁を破るために大きな役割を果たすものと期待したのです。

――加瀬一成様はM&Aの話を聞いて、どう思われたのでしょうか?

加瀬一成 実は私は全くの異業種から義父(エムアンドシー前・社長)の会社に入ったんです。若い頃はハウスクリーニングの仕事をしながら音楽活動をしていました。その後、エムアンドシーに入社し、後々オーナー社長として跡を継ぐものと思っておりました。だからM&Aの話は当初、受け入れがたいものでした。

「この先どうやって会社を発展させればよいのか?」。正直なところ、自社の将来についてずっと苦悩してきましたし、不安もありました。義父の話を聞いて以降、静かに考えてみたんです。「いいお相手と一緒になれば、溌剌とした気持ちで仕事ができるのではないか」。実際には浦田さんとお会いした時に気持ちが決まり、M&Aをポジティブに考えるようになりました。

実は、M&Aを本格的に進めるにあたって、本当にM&Aなんて成立するのか?当社について興味を持たれるか?と自信がありませんでした。でも、浦田さんに初めてお会いした際に、将来への不安など、カッコつけずに等身大のありのままの話をしたところ、興味を持っていただき、可能性を感じてくださったので、だったら一緒になって頑張ってみたいと思いました。

――優れた製品・技術力を持っていながら、休廃業・解散する中小製造業メーカーが増えています。そんななか、浦田様は「M&Aによってニッチトップ企業の集合体をつくる」とおっしゃっていますね。

浦田 私は元々、ソニーの経営企画からキャリアをスタートさせ、マッキンゼーで経営コンサルティング、産業革新機構で投資業務を行っていました。ソニー在籍時(2002年〜07年)、テレビ事業のビジネスを推進する中で、特に材料・部品・装置といった分野における日本の製造業の強さを実感し、これらの分野がハードウェアの技術的差別化の源泉だと痛感しました。特に、これらの分野はニッチプロダクトが多い業種でもあり、大手企業に限らず中小企業で高いグローバルシェアも持ち、好業績をあげている企業も少なくありません。一方で、当時から中小企業の事業承継に大きな課題があることは認識していました。それを解決する最大の手段がM&Aだと考えています。こうした原体験があるため、「M&Aによってニッチトップ企業の集合体をつくりたい」というのは、実はJMTC創業時からの思いでした。

――エムアンドシー様のどこに魅力を感じられたのでしょうか?

浦田 中小企業の事業承継案件は、これまでM&Aサクシードなどを通じて100件以上見ていました。強い中小企業の特徴は「競争力のある商品」と「顧客との強いリレーション」にあります。しかし見方を変えると「顧客が偏りがち」という弱点もあります。エムアンドシー様がまさにそうです。その意味では、グループ入りしていただくことで、「1を1.1ではなく、2や10にできる」。この先の大きな展開が思い描けたのです。「エムアンドシー様とはコラボしがいがある!」という、「M&A経営」(M&Aを経営に取り入れること)への強いイメージが湧きました。

エムアンドシー様が扱うレアメタルは非常に高耐熱であり、特殊な環境でニーズがあります。一方で難削材と言われ、加工がかなり難しいです。JMTCは、ベンチャーキャピタルとしてものづくりスタートアップの支援をしている中で、レアメタル加工技術を持つ国内企業がどんどん減って困っており、いい会社があれば紹介してほしいと聞いていました。そんな中、エムアンドシー様に出会いました。日本の中でのものづくりのイノベーションを支える一つの力になり得るという想いで、お声がけしました。

一成さんと初めてお会いした時に、「うちは製造業じゃないですよ、卸売りですよ」と話されていました。でも、エムアンドシーは卸売りではなくファブレスメーカーだと私は思いました。製品の最終的な責任をお客様に対して負っていて、在庫リスクも負っているのは、卸売りではなく立派なメーカーです。工場を持っているかは製造業の定義ではない。「お客様が必要とする製品を、品質を保証して確実に供給する」ことが製造業の付加価値です。JMTCは自らが機能材料のファブレスメーカーでもあるので、エムアンドシーの付加価値がよくわかりました。

「M&A経営」が中小製造業の成長を向上させる

――M&Aサクシードに掲載後、8社が希望候補として手を挙げました。たくさんの選択肢がある中、JMTC様を選ばれた理由を教えてください。

加瀬雅己 何よりも将来性です。大手メーカー様からの話もお聞きしましたが、浦田さんが推進している仕事にどこよりも魅力を感じました。また、うちの事業内容に興味や可能性を感じてもらっていると実感できたことも理由の一つです。

――譲渡に際しての条件は?

加瀬雅己 第一条件は、息子の社長継承(代表権は浦田氏)と従業員の継続雇用です。次に事業所の立地条件。従業員は事業所の近くで家を持っている者も多く、移転してもらっては困ります。浦田さんはそれらすべてを受け入れてくれました。

浦田 「M&Aに何を期待するか?」。JMTCの場合、それは事業を合理化して利益をあげることではありません。株主になることで譲り受けた会社に貢献すべきことは、自力ではなかなか広げられないような顧客や新しいビジネスを、一緒になって創るということです。それが日本の中小企業の最大の課題なんです。良い製品やサービスをつくっているが、成長の絵が描けない――その部分を担うのが譲り受ける私たちの役目だと思います。

会社がうまくいっている場合は変化させないことが大事です。社長は一成さんに継承していただき、事業所も移動しない。体制を大きく変えず、皆様に従来通り安心して仕事をしていただくことを最優先しました。提示していただいた条件は、むしろ私たちにとってそのほうがいいと思える内容でした。

――新体制での新しい挑戦が始まっているそうですね。

加瀬一成 JMTCグループ入りから2カ月ほどしか経っていませんが、浦田さんからすでに3件ほど新しい取引先の話をもらいました。エネルギー関係の案件などです。これまで接点のなかった取引先とリモート会議をするなど、非常に刺激を受けています。会社の雰囲気も今まで通りで、いい意味でグループ入りした実感がないですね。

検索機能が充実しているM&Aサクシード

――浦田様にはM&Aサクシードを2018年からご利用いただいています。

浦田 M&Aサクシードは、毎日チェックしています。これまでに、話が進みかけたものも何件かあります。製造業の案件も日々一定の件数が掲載されていますし、有効なツールとして活用しています。

――M&Aサクシードのおすすめポイントを教えてください。

浦田 チェック済みの案件は次に見る時に表示しない、といった、ユーザーが使いやすいようにいろいろな工夫がされているのがいいですね。特に検索機能が充実しています。キーワード検索はもちろん、「未閲覧のみ表示」を活用すると、保存しておいた検索条件を開いた時にも、新しい案件だけを見ることができます。

枠を超えた成長を可能にするM&A

――大切に育ててきた会社を第三者承継することに躊躇する中小企業経営者は数多くいらっしゃいます。

加瀬雅己 今回M&Aを経験して気づかされたことがあります。世の中には、私が仕事で培ってきた感性や感覚から一歩も二歩も先を行く会社があるということです。私よりもずっと大きな枠で経営や製造業について考えている人がいる。M&Aは確実にその出会いをつくってくれる機会になるでしょう。中小製造業の経営者は、今までの仕事に自信を持ってM&Aという可能性に挑戦してもらいたいと思います。

――浦田様は今後、「M&A経営」をどう展開されますか?

浦田 R&D=「休眠特許の事業化」、M&A=「中小企業の事業承継」――この2つがJMTCグループの成長ドライバーだと考えています。どれだけ多くの中小企業を束にできるか。今注目しているのは、医療機器、エレクトロニクス分野のニッチトップです。スピードを上げて中小企業の集合体・企業グループをつくり上げたいですね。