アパレル販売会社が同業の通販サイトをM&A。with/afterコロナを見据え、ECサイトを強化
- 譲渡
企業:通販サイトなどの運営企業 事業概要:アパレル、雑貨小売 EC、通販サイトの運営 本社所在地:大阪府 譲渡理由:自社事業の選択と集中
事業譲渡- 譲り受け
企業:株式会社宝島ジャパン 事業概要:アパレル販売、貿易事業 本社所在地:茨城県 従業員数:22名 譲り受け理由:事業拡大のため
- EC・通販サイト
- 茨城県
- 大阪府
アパレル販売や貿易事業を行う株式会社宝島ジャパンは、「with/afterコロナ」を見据え、ECサイトの強化のため、EC・通販サイト事業のM&Aを検討していました。そして、今回出会ったのが、アパレル・雑貨小物ECサイトを手掛ける企業です。同社には宝島ジャパンがもともと扱っていたのと同じブランドなどのアパレル在庫が多くありました。そこにシナジー効果を見込み、宝島ジャパンは即座にM&Aを決断しました。その経緯などについて、株式会社宝島ジャパン代表取締役社長の小園江 和博様に伺いました。(2021年8月公開)
「人」を大事に考え、倒産で職場を失った人の救世主となるM&Aも経験
――宝島ジャパンの事業内容とM&Aを検討した背景について教えてください。
小園江(宝島ジャパン) 株式会社宝島ジャパンは、モンゴルの製品を日本に紹介する事業や、健康食品を販売する事業、さらに3店舗のアパレルショップを運営しています。店舗は20~30代の女性向けショップ、高級アパレル、「ムーコットン」というナチュラル系のショップと、異なる3つの路線を揃えています。
アパレルショップを運営するなかでわかったのですが、アパレル業界は古い体質が残っていまして、メーカーさんとのやり取りもメールよりもFAXが多いような業界です。もともと私は中小企業診断士として企業にアドバイスを行ってきた観点からも、デジタル化の必要性は強く感じていました。少しずつ今の時代に合ったビジネスに進化させていこうと考えていた矢先、新型コロナウィルスの感染拡大が起こったのです。デジタル化を進めなければ、リアル店舗は大変なことになる。そこで、M&Aの検討を開始しました。
――宝島ジャパン様は、以前にもM&Aを行っていたそうですね。
小園江 5年ほど前に、アパレル系店舗を10店ほど持っていた企業が経営不振に陥ったため閉店しました。顧客もついている接客技術のある従業員の方々も解雇されると知り、そのうちの2店舗の事業を譲り受けました。
譲渡企業と取引のあったメーカーは、経営不振に陥った譲渡企業にマイナスイメージを持っていました。取引を継続することに不信感があったようですが、弊社の信用で、販売を継続しました。その結果、弊社がもともと扱っていたモンゴル製品も売れ、利益率もよくなり、シナジーが見込めたことはよかったです。
また、4年前に大手百貨店が撤退して、そこで働いていた従業員が解雇となりました。20年ほど働き、お客様とのつながりもある方も多数いましたので、その方たちを雇用し、新しい店を始めたのが、アパレルショップ3店舗目となります。
――従業員の方を守るために、事業を始めるというのは興味深いです。
小園江 仕事をするうえで、「人」が大事だと考えているためです。単に店を開けて継続するだけではなく、お客様とのつながりを重視することが大切。そのお店がなくなったら、買える場所がなくなってしまうので、地域を支える意図もあります。
ECサイト強化のためのM&A、在庫もシナジーに
――譲渡企業様と出会った経緯を教えてください。
小園江 アパレルを扱うインターネットに強い企業を探していましたが、私たちとのシナジーが重要なため、なかなか出会えずにいました。そんなとき、2020年5月にM&Aサクシードに登録し、弊社がアパレルショップで販売しているのと同じブランドを取り扱う譲渡企業様に出会ったのです。
在庫をたくさん抱え、大変な様子でした。しかし私は、その在庫に魅力を感じたのです。ネットでもリアルでも販売できると感じ、すぐに倉庫に商品を見に行きました。
ナチュラル系の衣類が多く、弊社で取り扱いのあるブランドもいくつか入っていました。
「弊社とシナジー効果がある」と思い、すぐに話を進めました。譲渡企業様は大阪の会社だったため、オンラインで話し、その後もメッセージのやりとりをして、交渉開始から4カ月で最終契約を締結しました。
――先方はなぜ御社に譲渡しようと決めたと感じましたか。
小園江 いくつかの競合企業もいたようでしたが、条件面とスピード感で決めてくださったようです。弊社がすぐに倉庫を見に行ったのは大きかったですね。結局、倉庫には仕入れ金額だけで数千万円分の在庫を抱えていたのですが、割安な金額でM&Aが成立しました。
――譲渡企業様の事業が、御社にとって価値になったのですね。
小園江 その通りです。譲渡企業様は、今後この事業をどう運営していけばよいかについて、困っていらっしゃいました。それで、売却を検討されていたのです。しかし弊社からすると、高いシナジーがあります。お互いにとっても非常にウィンウィンの形になりましたね。
――ではM&Aサクシードを始めたきっかけを教えてください。
小園江 「M&A」で検索していたときにネットでたまたま見つけました。情報量が非常に多く、選択肢がいくつかあったときに担当者の方に質問をすると、しっかりと説明をしていただき、対応面に好印象を抱きました。他のM&Aプラットフォームなどは利用しませんでした。
――PMI(経営統合作業)は順調に進みましたか。
小園江 今回は事業の引き継ぎだけで、従業員の方はいなかったので、順調でした。国からの補助金もでて、よかったです。その後、在庫も順調に販売していくことができ、さらに新たに商品を仕入れてそれをネットで販売していくという、本来の流れになってきています。今回、大手インターネットショッピングモールと自社サイトも譲り受けたのですが、両方とも弊社の取り扱いがあったこともPMIが順調に進んだ理由の1つです。
しかし、大手インターネットショッピングモールは、弊社がターゲットにする顧客層と合わないと感じたので、自社サイトで価値を出しながら進めていこうと思っています。
大手インターネットショッピングモールの名義変更は思ったよりも時間がかかりました。そのため根気強くコミュニケーションを取りつつ進めました。社内においては、私が下準備を進めて、実務は弊社のネット部隊がスケジュールだてをして、それに添うかたちで行いました。両社とも同じ仕組みだったため、スムーズでしたね。
M&Aの流れは、今後も広がっていくはず。シナジーがあれば今後の可能性も
――今後の展望と、これからM&Aを考えている方に、留意点やメッセージをお願いします。
小園江 今後、M&Aを検討されている方は、これからより活発になっていくと思うので、積極的に行ったほうがいいと思います。コロナ禍の影響を受けて、この1年でかなりの打撃を受けている会社が多いでしょう。本来なら体力のない会社も、融資で何とかなっている部分があります。融資の返済が開始される頃、M&Aがさらに活発になるはずです。私としても、この時期はM&Aを視野に入れています。
M&Aを実際に行う際の留意点は、やはり「人」だと思っています。今回は従業員のいない形の、事業譲渡だったので問題はないのですが、従業員がいる場合は、多くの配慮を払う必要があります。社長同士は合意に基づきますが、従業員の考え方はそれぞれです。異なる慣習もあるでしょう。それらに配慮して行わないと、いい結果を生み出しにくいと思います。
今後弊社は、モンゴル製品を主軸に、さらに事業を伸ばしていくつもりです。中小企業診断士としてのノウハウも今後のM&Aに生かしつつ、シナジーがあればM&Aも検討していきたいですね。
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