事業承継・M&Aプラットフォーム M&Aサクシード

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ニッチな事業を集めて成長する「M&A経営」。後継者不在の地元企業を救った若手経営者

  • 譲渡
    有限会社ウシオ工産
    事業概要:鋼製の建築用建具等の製造業
    本社所在地:広島県福山市
    従業員数: 8名
    譲渡理由: 後継者不在
    株式譲渡
    譲り受け
    丸加ホールディングス株式会社
    事業概要:港湾運送事業、製缶・機械部品加工業の持株会社
    本社所在地:広島県福山市
    従業員数:230名
    売上高:約27億円(グループ全体)
    譲り受け理由:事業拡大
  • 広島県
  • 製造業
  • 運輸業

欧米の中小企業に比べ、小規模の会社の割合が高いのが日本の特徴です。技術やサービスは優れているのに、競争力が弱いと言われるゆえんでもあります。そういった中小企業の弱点を補う役目を果たしているのがM&Aです。営業ルートやバックオフィスの共有化、共同工場化など、生産性の向上にもつながるからです。今回の成功事例は、ともに広島県福山市に本社を置く会社による第三者承継です。運輸業と製造業を傘下に持つ丸加ホールディングス株式会社は、ニッチな事業を特色として成長してきました。一方の有限会社ウシオ工産は小規模の工場ながら、他にない技術力で日本全国に得意先をもっていました。しかし創業者の他界により、経営が不安定な状態にありました。そこで地域の後継者不在の会社を後押しするという意思のもと、丸加ホールディングスが譲り受け先として登場しました。丸加ホールディングス株式会社 代表取締役社長の喜多村 祐輔 氏と有限会社ウシオ工産 代表取締役社長 潮 理絵氏に話を聞きます。(2022年2月公開)

ともに広島県福山市の会社同士によるM&A

――会社の事業概要を教えてください。

丸加ホールディングス 喜多村 丸加ホールディングス(以下、丸加HD)は祖父が港湾運送事業から始めた丸加海陸運輸株式会社から発展した株式会社です。3代目となる私が2018年に設立しました。トラック輸送・クレーン作業・港湾荷役の丸加海陸運輸と製缶・機械部品加工の有限会社丸加製作所の2社に加え、ウシオ工産様が今回、新たにグループ入りしました。

ウシオ工産 潮 1988年に父が創業した、鋼製の建築用の建具がメインの製造業です。主なお客様は、商業施設、学校や病院などの大型施設などです。昨年の売上げは、コロナの影響で約6,500万円でした。現在の社員は8名です。5年前に父が亡くなった後、経理を担当していた母が社長を継ぎ、1年ほど前に私が継ぎました。今回、丸加HD様に引き継いだことで、今後、私と妹は執行役員として会社に残ります。

事業承継をどうするか決める前に亡くなった創業者の父

――潮様が第三者継承を検討することになった経緯を教えてください。

 父と母がほぼ二人三脚で頑張ってきました。私は当初、家業を継ぐことを考えていなかったので、他県で会社員をしていました。10年前に私が加わりましたが、3姉妹のうち三女が私の数年前に入社していました。そして、8年前に父の癌がわかり、慌てて広島県事業承継・引継ぎ支援センターに第三者承継の相談にうかがいました。

――創業者であるお父様はM&Aが念頭にあったのですか?

 相談は始めていたものの、事業承継を実現する前に、父は亡くなりました。私が社長を引き継いだ際にも、社員が頑張ってくれていたので、このまま社長らしい社長がいなくてもやっていけるのではと思ったりして母も私も譲渡先についてじっくりと探していました。広島県事業承継・引継ぎ支援センターからは何社か紹介していただきましたが、断ったり、断られたりがあり時間が過ぎて行きました。

――そんななか、広島県事業承継・引継ぎ支援センター様を通じてウシオ工産様が「M&Aサクシード」に掲載し、丸加HD様から連絡がありました。

 仕事でお付き合いのある業種の会社だけを候補と考えていましたので、「丸加HD」という名前を初めて聞いた時は、正直ピンときませんでした。しかし、2021年春に初めて喜多村社長と弟の喜多村常務にお会いして、少しお話ししただけで私も妹も「この会社ならうちを委ねられる」という安心感を持ち、その日のうちにお願いしようと決めました。その後、手続きなどを経て、初めてお会いしてから約半年後の10月末に契約を締結しました。

――長い間、決められなかったのに、なぜ第一印象で丸加HD様に譲渡する決断ができたのですか? 

 「少し背中を押せば、ウシオ工産は大きく成長できる」と喜多村様が言ってくれたことが大きかったですね。お二方とも、礼儀正しく、いばるということではなく貫禄がありました。それ以上に相手を思い遣ってくださる方だとわかりましたので、私も妹も初めて同時に「大丈夫」と思えたのです。

「この会社は責任を持って伸ばせる」。他では真似のできない技術力が決め手に

――「M&A経営」(M&Aを経営に取り入れること)に対する喜多村様の考え方を教えてください。

喜多村 丸加グループの特長は「ニッチ」にあります。私たちはニッチ事業が集合することで成長してきました。例えば丸加海陸運輸は、危険物や大型機械など特殊なものを運ぶことで、業界内でプレゼンスを保っています。瞬間的に儲ける必要はないし、流行り物にも興味はありません。永続的に社会から必要とされるものを扱いたい。それがひいては地域貢献につながります。

「この会社にはいいものが眠っているぞ!」。ウシオ工産様の工場にお伺いした時に、そう感じました。建物が古くても清潔な環境を保っている。いい空気感で仕事をされていました。さらに営業先リストを見てびっくりしました。さまざまな業種の大手企業が並んでいたからです。他では真似できない技術や能力が、仕事を呼び込んでいたのです。それは丸加グループと同じ質の特長です。大手にはできない技術やサービスが、大手と土俵を同じくさせるのです。「この会社は責任を持って伸ばせる」と直感しました。

――ウシオ工産様とのシナジー効果をどこに見出しましたか?

喜多村 私たちの営業ルートを使えば、ウシオ工産様の売上げはしっかり伸ばせる。想定している規模まで伸ばすことができれば、利益を上げ続ける良い会社になります。丸加グループ内でも、製作所は海陸運輸より売上げは少ないですが、利益率の高い優良企業です。人が少ない分、マネジメントしやすいという利点もあります。

――「M&A経営」を意識されたのはいつ頃からでしょうか?

喜多村 5〜6年ほど前から、一定の企業規模がないとこれからの中小企業はやっていけないと感じていました。海陸運輸も社員数を100名から230名まで増やしました。グループ全体で考えるとM&Aは必須です。

「先代の想いを引き継ぐ」という共通点

――潮様は第三者承継にあたりどんな条件を出したのですか?

 「取引先にご迷惑をお掛けしないこと」。弊社は地方の小さな会社です。そんな弊社にご縁あってご注文くださるお客様や材料を卸してくださる企業様など、多くの支えがあって事業を続けてこられました。M&Aで代表者が変わるからという理由で、その関係をなくすことはできません。

もう一つは「社員全員の継続雇用」です。10人足らずの小さな会社ですから、社員の家族のことも念頭に置いていました。M&Aの話を進める最中も、社員の子どもさんの顔が浮かんだり、社員のお母様とお話しした時のことが思い出されたりして、なんとか守りたいという気持ちを持っていました。

――得意先との関係性がわかるエピソードがあるそうですね。

 時折、聞き覚えのない会社様からご注文があります。話をうかがうと、父が健在だった頃にご注文をいただいた会社様からのものや、父がサラリーマンの時の元同僚の方からのお声がけでした。他社では対応できない製品が必要な時に、うちのことを思い出してくださったようです。父が亡くなったことを伝えると、感慨に耽る方もいらっしゃいます。

――「先代の想いを引き継ぐ」という共通点が感じられます。

喜多村 創業家の長男として育ちました。生まれながらに背負っている、目に見えないものがあります。代を継ぐことのために、勉強して、人とたくさん会って、望まない酒もたくさん飲んで、努力してきました。きっと、潮様も同じ気持ちで今まで来られたのだろうと思います。

――潮様のお父様が亡くなられた後、社員から不安の声はあがりませんでしたか?

 M&Aを準備していることは秘密にしていましたが、「この状況をどうするつもりですか?」と聞いてくる社員もいました。しかし、今回、第三者承継を無事成就させたことで、経営に素人の私があたふたすることもなくなり、社員が安心して生き生きと働ける環境になりました。

弊社が丸加HD様の一員になってお仕事に携わるのは未だほんの数か月ですが、丸加HD様の社員の方たちは「仕事に厳しく、人に優しい」と感じています。私自身がそうなりたいと思いますし、社員達も目指して欲しいと思います。

――地方には事業承継ができず、黒字廃業する中小企業が数多くあります。M&Aはそれを解決してくれます。

 悩んだ8年間があったからこそ、丸加HD様との最高の出会いがあったと思います。M&Aに際して、時間がかかったからいい、早い方がいいということは言えません。それはケースバイケースです。眠れない夜も姉妹の間で壮絶な口喧嘩もありました。悩みを抱え込まず、まずは事業承継・引継ぎ支援センターや銀行などに相談してみるのがいいと思います。

M&Aサクシードで「M&A経営」の可能性を探る

――M&Aサクシードの感想をお聞かせください。

喜多村 私はどちらかというとアナログ派なんです。インターネットでのM&Aは、正直なところまだ難しい部分もあります。しかしM&Aサクシードは、担当者が電話でフォローしてくれるのでとても助かっています。利用以前は案件情報もあまりなく、なかなか動きづらかったのですが、M&Aサクシードのおかげで、今は十分な環境にあります。M&Aサクシード2年目に入りますが、頻繁に使い勉強させてもらいながら、「M&A経営」の可能性を探ろうと思っています。

――福山以外の地域でのM&Aも考えられているそうですね。

喜多村 運輸・物流は場所が意味を持つ業態なので、どこに基地を構えるかで戦略が変わってきます。福山だけでなく倉敷や静岡の運輸・物流会社があれば、積極的にM&Aを検討したいですね。運輸・物流は公共性が高い分野です。インフラを担うものとしての責任がありますので、基本的には保守的な運営になります。そのため異なった業種において、会社を変革させたいと考えています。「運ぶ」対象業種は様々ありますので、M&Aにおいてシナジー効果が出しやすいと考えています。

――M&Aサクシードは今後もお役に立ちそうですね。

喜多村 妻が美容室を経営しているんです。他県への拡大も考えていて、実はそこでもM&Aサクシードを利用しています。美容室も機械に置き換えられない労働集約型の業種です。丸加グループとビジネスモデルが近しい。丸加の理念は「『人』が事業の中心であり続ける」です。美容室の拡大も、丸加で「M&A経営」を考えることと根本は同じです。